Wednesday, 07 February 2018

「こころ」再読

夏目漱石の「こころ」はマウンティング小説だといふ記事を見かけた。
リンクはしない。
「夏目漱石 こころ マウンティング」でWeb検索をかければ出てくることと思ふ。

「こころ」は高校生のときに読んだ。
国語の教科書に一部が抜粋されてゐて、残りは各自読むやうにといふことになつてゐた。
親の「漱石全集」の「こころ」を手にした。

このとき授業で国語の教師が「Kには落ち度はないのか」といふ問ひを発した。
この問ひとその答へばかりが印象に残り、あとのことはよく覚えてゐない。
あー、でも同級生たちが「馬鹿だ。ぼくは馬鹿だ」とか云ひあつて遊んでたりはしたなあ。
教室には修学旅行のをりにだれかが買つてきたとおぼしきちいさな虎の置物の「小李徴(コリチヨウ)」もゐた。
いまはなにもかも懐かしい。

そんなわけで読み返してみるか、と思つたのだが、もしかしてこの「「こころ」の賞味期限は切れてゐる」「男同士のマウンティングを描いた小説である」といふインパクトの瞬間ヘッドの回転するやうな話つて、いはゆる「ステルス・マーケティング」といふアレなのではあるまいか、といふ疑念が脳裡をかすめた。

しかし、「こころ」である。
漱石だ。
いまさら「ステマ」とやらでもあるまい、といふので、青空文庫の「こころ」を読み返すことにした。

…………こんな話だつたつけか。
「先生」と「私」との出会ひはおぼろげながら記憶にあるものの、そのあとの「先生」の奥さんに会つたりだとかなんだとか、教科書に載つてゐなかつた部分は「えー、さうだつけかー」の連続だつた。
新鮮な気分で読めたともいへる。
さすがに「先生」の手記の部分はもうすこし記憶に残つてはゐたものの、前半はほとんど覚えてゐなかつた。
墓石に掘られた漢字が西洋人の名前にむりやりあてたもの、みたやうなどうでもいいことは覚えてゐたりする。
漱石、読み直してみるかなあ。

読んでゐて思つたのは、自分は「マウンティング」といふものがどういふものだが理解してゐないといふことだ。
「こころ」には「もしかして、かういふのが「マウントを取つてゐる」やうに見えるのかな」といふやうな部分もないわけぢやないけれど、なんだかよくわからないのだ。
さういへば、先日NHK教育の「ねほりんぱほりん」といふ番組でいはゆる腐女子のことをとりあつかつたときに、「腐女子のマウンティング合戦」とかいふ感想があつて、「え、どこらへんがさうだつたの?」とふしぎに思つたものだつた。

「こころ」がマウンティングを描いた小説なのかどうかなどわかるはずがないのだつた。

読んでゐてショックだつたのは、「先生」の覚えたであらう衝撃を覚えることができなかつたことだ。
「先生」は絶対この上ないほどの衝撃を受け、ほとんど立ち直れない状態になつただらうと思はれる場面があつた。
でもなぜかその実感が薄い。
「先生」の気持ちにならうとすればならうとするほど衝撃が遠のいてゆく。

物語や小説を読むことの効用として、「他人の気持ちがわかるやうになる」といふのがあるといふ。
そんなことを考へて本を読む人もなからうが、いはれてみれば、自分とは一切関はりのない人物たちのあれこれを描いた文章を読むことは、自分以外の人間の気持ちはともあれ事情や状況を理解しないことには読めないとは思ふ。

でもなあ、あのとき、自分はただの傍観者で、単に記録を淡々と読んでゐるだけ、といふやうな、むなしい気持ちになつてしまつたんだよなあ。
また日をあらためて読めばそんなこともないのかもしれないけれど。

「こころ」は全然覚えてゐなかつたし、読んでゐておもしろかつた。
これだけ覚えてゐないと、昔一度読んだきりの小説はみな新鮮におもしろく読めるのではあるまいかといふ気がしてくる。
新刊を読んでゐる場合ぢやあないのかもしれない。

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Friday, 02 February 2018

Kindle で読むと目が滑る

Kindle で本を読んでゐると、画面の上を目が滑る感じがする。

さういふ研究結果があるのださうだ。
Solitudeで知つた。
電子デヴァイスで文章を読む場合、アラームを切り通信を遮断してゐても、推測した結果を導き出したり理論的に考へたりする力が落ちるのらしい。
PCで文書を作成する際、必ず紙に印刷して誤変換や誤表記を確認しろ、といふのも、根拠のないことではないやうだ。

Kindle で読んだ和書は酒見賢一の「陋巷に在り」の数巻と、池波正太郎の「真田太平記」の数巻、山田風太郎、神林長平がそれぞれ数冊、あとは中島敦、芥川龍之介、坂口安吾が数点といつたところか。
過去に読んだことのあるものばかりだ。
Kindle でしか読んだことのない和書は「訓読みの話」くらゐだと思ふ。
紙の本で読んでゐたら「これはいい表現だなあ」「いきな云ひまはしだ」などと感じるだらうところも、Kindle で読んでゐるとするつととほりすぎてしまつてゐるのぢやあるまいか。
実は伏線がはられてゐたところを気づかずに読み進めてゐるのぢやあるまいか。
そんな気がしてならなかつた。

ところで、去年読んで一番おもしろかつた本は Nabokov's Favorite Word Is Mauve で、これは Kindle で読んだ。
また、「二都物語」は日中仕事をしてゐてもつづきを読むのが楽しみで仕方がなかつた小説で、これも Kindle で読んでゐた。
どちらもハイライトを引いた部分も多く、メモの打ちづらい Kindle であれこれ書き込んだ部分もある。

つまり、紙の本で読むときとそれほど遜色なく読めてゐたといふことではあるまいか。
Kindle で読んでもそれほど目の滑る感覚を覚えることなく読める本もあるといふことだ。

サンプルが少なすぎて断定はできないが、おそらく外国語の本を読んでゐるときにさういふ状態になるのだらうと思ふ。
外国語なのでよく読まないと理解ができない。
よく読んでも理解ができないともいへる。
それをできるだけ理解しやうと思つて読むので、電子デヴァイスで読んでもそれほど目が滑る感覚を覚えずに読めるのぢやああるまいか。
もしかしたらいまではさういふ研究結果もあるのかもしれない。

といふわけで、自分にとつては Kindle では洋書を読むのがいいといふことになる。
Kindle はもともとさういふ用途に向いてゐるといふ。
わからない単語を選択すれば辞書が意味を教へてくれるし、Word Wise といふ機能もある。

でも、できれば日本語の本も読みたい。
いま読んでゐる「ドッキリチャンネル」などは700ページを超える大部で、電書だったらもつとかるくてすむのに、と思つてしまふし、「陋巷に在り」とか「真田太平記」とかまだ読み終へてゐない物語もある。
なんとかして、洋書を読むときのやうな感覚を和書を読むときにも取り入れることができないだらうか。
日本語がわからない気分になつて読めばいいのかな。

今年の課題がいま見つかつた。

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Thursday, 01 February 2018

1月の読書メーター

1月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:1830
ナイス数:32

若手歌舞伎若手歌舞伎感想
昔の「演劇界」の劇評などを読むと「かくかくしかじかの所作はこの役の性根と違う」などという話が出てくる。自分が芝居を見るようになってからの劇評ではあまり見たことのない指摘で「最近の劇評家はそういう見方はしないのかなあ」と思っていた。どうやらそうではないらしいことがこの本の「跋」に述べられている。若手役者の評、近年上演された芝居の評が多く、読んでいて思い出しやすいところが大変いい。想定読書層もまちつと若い層を狙うとなおよかったかと思うが、若い層は劇評など読まないとの判断だろうか。
読了日:01月02日 著者:中村 達史
How To Think: A Guide for the PerplexedHow To Think: A Guide for the Perplexed感想
ヒトの脳は考えることを忌避するのだという。面倒だからだ。それでも考えようとする人は異端なのではないかなあ。「人間はひとりで考えることはできない」という話が書いてあるというので読んでみた。先にカーネマンを読んでおくべきだったかもしれない。
読了日:01月10日 著者:Alan Jacobs
あのころ、早稲田であのころ、早稲田で感想
「「日本のローザ・ルクセンブルク」と呼ばれた」と「ウテナさん祝電です」の著者紹介にあったことを鮮明に覚えている。この本にはそんな姿はまるで見えない。「戦後民主主義の中で育ってきた」とあるのを読むと、戦後民主主義というのは戦中以前のことはすべてダメだったとするだけでものの本質はそのころとまったく変わっていなかったのではないかという気がする。
読了日:01月11日 著者:中野 翠
慶應志木高校ライブ授業 漢文は本当につまらないのか(祥伝社新書)慶應志木高校ライブ授業 漢文は本当につまらないのか(祥伝社新書)感想
題名が惜しい。おもしろいと思う人もいればそうでない人もいるし、おもしろいものもあればそうでないものもあるというのが実のところなのではないかと思うからだ。生徒たちが段々白文を読めるようになっていく様がおもしろいと思った。こういう授業を受けられる人もいるんだな。うらやましい。
読了日:01月14日 著者:橋本陽介
統計学が最強の学問である統計学が最強の学問である感想
Excelを使ってちょっといろいろやってみようかな、と思った。内容とは関係ないけれど、紙質のせいでページがめくりづらくて難儀した。廉価にして大勢に読んでもらおうということなのだろうけれども。
読了日:01月17日 著者:西内 啓
精神の政治学 (中公文庫プレミアム)精神の政治学 (中公文庫プレミアム)感想
昨今スマートフォンの使用を控えネットに接続する時間を減らそう、そうすることで自分本来の時間を取り戻そうなどという説を目にするけれど、そんなことは、ほかのたいていのことがそうであるように、昔から云われていたんだな。
しかし、人間はその技術の進歩に見合った精神状態にあったことがあるのだろうか、とも思う。それと、この講演を聞きにきたのはどういう人で、どういう反応があったのかも気になるなあ。
読了日:01月20日 著者:ポール・ヴァレリー
史上最悪の英語政策—ウソだらけの「4技能」看板史上最悪の英語政策—ウソだらけの「4技能」看板感想
中高六年間といえど週に三〜五時間の授業では一年間で五.八日間にしかならない、という主張には「それじゃあできるようにはならないよね」とは思う。「英語、できるようになりたいけど、でも(英文法とかは)違うんだよね」という発言に違和感を覚えていたのだが、「そういうことだったのか」という指摘もある。
しかし、ことばのことを書き文章の書き方について云々しているわりには誤変換を超えた誤表記がある(普段そういうことにあまり気づかない質なのだが気がつくレヴェル)のが残念。
読了日:01月24日 著者:阿部公彦
朱子学と陽明学 (岩波新書 青版 C-28)朱子学と陽明学 (岩波新書 青版 C-28)感想
「暗闇仕留人」でナックル星人……ぢやなくて成瀬昌彦が「論語集注」を読んでいるのを見て気になっていた朱子学。基本書として勧められて読んでみたが、学校の世界史でやった「宋 朱子学 性即理」「明 陽明学 心即理」ていどの知識ではとても太刀打ちできなかった。仏教や道教の影響のくだりはしかし読んでいておもしろかった。李卓吾の場合は回教の影響ももっとあったのではないかと思うが、そこは紙幅が許さなかったのか。
読了日:01月31日 著者:島田 虔次

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Monday, 01 January 2018

12月の読書メーター

12月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:2566
ナイス数:37

新釈漢文大系  115 史記(列伝六)十三新釈漢文大系 115 史記(列伝六)十三感想
酷吏って郅都より前にはいなかったんだろうか。単に記録が残ってないだけなのかな。張騫の匈奴の妻子はどうなったんだろう、というあたりから行間を読んで物語を作ったりしちゃうのかもしれない。亀策列伝を読んでいると「易経」を読み返したくなるな。
読了日:12月02日 著者:青木 五郎
太陽と乙女太陽と乙女感想
森見登美彦は虎を内に潜めているのか。いいなぁ、虎。虎なら人に云っても恥ずかしくない。こどものころから作った物語を母親に話して聞かせていたというから、世に恥じることはなにもないのだろう。だから虎なのかもしれない。
読了日:12月04日 著者:森見 登美彦
毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術感想
誤字脱字のチェックをする必要が生じたので再読。やはり「違和感を与えるうちはやめた方がいいでしょう」というような指摘に戸惑ってしまう。違和感を与えているかどうかって、どうやったらわかるんだろう。使っている方は違和感がないから使っているのではないのだろうか。
読了日:12月05日 著者:毎日新聞・校閲グループ 岩佐義樹
A Christmas Carol (Illustrated) (English Edition)A Christmas Carol (Illustrated) (English Edition)感想
スクルージが先に死んでいてマーレイが生き残っていた場合、スクルージが幽霊としてマーレイのもとに現れただろうか。スクルージにはどこかしら悔い改めそうな部分があったのかなあ。こどものころや若いころのつらい経験を見せつけられるくだりが堪えた。季節ものと思ったけれど、なんとなくスクルージにはずっと冒頭部分のような人物であってほしいような気もする。
読了日:12月12日 著者:Charles Dickens
わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)感想
シャーロック・ホームズは云う: You see, but you do not observe. 「わかったつもり」は見ているだけに過ぎない。観察しないと、ということのように思われる。個人的には三年ほど前に知った言語技術が少しずつではあるものの身についていることが実感できてよかった。
読了日:12月15日 著者:西林 克彦
新釈 走れメロス 他四篇 (角川文庫)新釈 走れメロス 他四篇 (角川文庫)感想
とある下宿とその周辺に関わる人々の物語として読んだ。時系列としては「山月記」が一番あとなのか知らん。「桜の森の満開の下」の最後の方とどっちがという感じか。
読了日:12月19日 著者:森見 登美彦
人はなぜ物語を求めるのか (ちくまプリマー新書)人はなぜ物語を求めるのか (ちくまプリマー新書)感想
人は多かれ少なかれ先を予想して生きていると思っている。朝この時間に出れば駅でその時間の電車に乗れるはずでそうすると出勤時間に間に合う、というのは予想なのだと思って来たけれど、期待でもあるんだろう。乗れるはずと思っていた電車に乗れなかったり間に合うと思っていた出勤時間に間に合わなかったりするとがっかりするからだ。予想をせずに生きていけるとは思えない。できるだけ期待の要素を少なくしていくしかないか。
読了日:12月20日 著者:千野 帽子
Solitude: In Pursuit of a Singular Life in a Crowded WorldSolitude: In Pursuit of a Singular Life in a Crowded World感想
孤独を楽しめる人は他人または何かとのつながりのある人、ということなのだろうが、そうすると冒頭のイーディス・ボーンの場合はどうなるのだろう。土地勘があるかどうかはかつては死活問題(といったら大げさだけど)だったと云うけれど、だったらなぜ世の中にはこんなに方向音痴な人が多いのか。淘汰されなかったということなのかな。それとも地図が一般的になってから増えたのだろうか。等いろいろ疑問が多い。楽しく読めたということだろう。
読了日:12月26日 著者:Michael Harris
断片的なものの社会学断片的なものの社会学感想
学問からこぼれ落ちるものというのは多いのだろうか。何かがこぼれ落ちていると感じるかどうかなのかな。自然科学だとどうなのだろう。などと考えながら読む。「いまこの瞬間、この人のこういう姿を後々も覚えているのは自分だけだろう」と思う瞬間ってあるよね。
読了日:12月29日 著者:岸 政彦
反省させると犯罪者になります (新潮新書)反省させると犯罪者になります (新潮新書)感想
職場でセキュリティ事故が発生すると当事者による報告が公開される。これがまったく役に立たない。「事故の原因はそれじゃないだろう」と思われるようなことばかり書かれている。その理由がわかった気がする。報告を受け取る側には「再発を防ごう」ということよりも「事故を起こした人間を罰しよう」という意識の方が強いんだろう。
読了日:12月31日 著者:岡本 茂樹

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Friday, 29 December 2017

今年読んだ本 2017

今年は八十冊ほど読んだのらしい。
何年か前は、「一月に五冊読む」といふ計画をたててゐた。
たてなくなつて久しい。
でもまあ、それくらゐは読むのだらう。

予定をたててゐたころといまとではなにが違ふことがあるのか。
たとへば、今年の四月は三冊しか読んでゐない。
でも予定をたててゐないので別段問題はない。
予定をたててゐたころは、なんとかしてあと二冊読まうとしてゐた。
予定をたててゐなくても、最終的な月平均はほぼ五冊。
予定をたてなくても読めるやうになつたといふことか。
あるいは、もともと予定なんぞたてなくてもこれくらゐは読むといふことなのか。

今年は久しぶりに電車を乗り過ごすかと思ふやうな本に出会つた。
Nabokov's Favorite Word Is Mauveである。
この本は、電子化された古今の名著をもとにどの作家・どの本でどんな単語が使はれてゐるか統計をとり、それについてあれこれ述べてゐる本だ。
これまで生きてきて、本がおもしろかつたので電車やバスを乗り過ごしたことは一度しかない。
地図帳を見てゐるときだつた。
それ以来のできごとだつた。
データが並べてあつて、そこからいろいろ妄想をめぐらせることのできる本が自分は好きなのらしい。
地図帳も似たやうなものだ。
この本を読んだあと、Lolitaも読んだ。
云はれてみると確かに「mauve」が何度か出てくる。
ナボコフといへば今年は「アーダ」の新訳が発売された。
これにもやつぱり「mauve」がたくさん出てくるのか知らん。

今年は再読した本も多かつた。
中でも「二都物語」は乗り過ごしはしさうになかつたものの、仕事中など読書を再開するのが待ち遠しい気分でいつぱいの本だつた。
多分再々読くらゐだと思ふ。
Nabokov's Favorite Word is Mauveを読んだあとだつたからだらうか、ディケンズの文体のリズムといはうか調子といはうか、読んでゐてとても心地よかつた。
もちろん話の内容もおもしろい。

Nabokov's Favotie Word is Mauveの前段にはThe Secret Life of Pronounsといふ本があつた。
これは代名詞や冠詞といつた普段はあまり着目されない品詞をどれくらゐどのやうに使つてゐるかについて統計をとり、あれこれ述べた本だ。
著書James Pennebakerは大統領選挙などのdebateや就任演説で各候補者や大統領の使用した単語の統計を取つて分析してゐたりする。大学の研究室でやつてゐるのかな。そんな感じ。
これがいつもおもしろい。きちんと読んでゐるわけではないが、更新されるたびに見にいつてゐる。
英語だと単語の切れ目がわかりやすいから統計もとりやすからう。
日本語でも似たやうなことを研究してゐる人がゐるらしいので、できたら読んでみたい。

なんとなく、以前よりも楽しく本を読めるやうになつてきた気もする。
予定をたてないやうになつたからかもしれないし、上にあげたやうな本や「読んでいない本について堂々と語る方法」や「文学の楽しみ」、「わかったつもり」などのおかげのやうな気もしてゐる。

来年もこれといつて予定をたてるつもりはない。
自分なりに楽しく読んでいけたらいいなあ。

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Friday, 08 December 2017

ミスのなくならないすごい文章術

毎日新聞・校閲グループのミスがなくなるすごい文章術」を再読した。
仕事で誤字・脱字のチェックをする機会がありさうだつたからだ。

前回読んだときも思つたけれど、「違和感を与へるうちは(そのことばの使用を)やめた方がいいでせう」なんてな場合、どうすればいいんだらう。
違和感を感じる人がゐるかどうかつて、どうやつたらわかるんだ?
書いてみなければわからないのではないだらうか。

書く方は違和感がないから使ふのだ。
「ら抜きことば」に対して「さ入れことば」といふのがある。
「やらさせていただく」とか「行かさせていただく」とか、「さ」が余分に入つてゐることばである。
文章で書いてあるのはあまり見た記憶がないが、耳からはよく聞く。
坂東玉三郎といふ歌舞伎役者がよくこれをやらかす。
玉三郎が云ふからだらう、それに続く若い役者もよくこの「さ入れことば」を使つてゐる。

玉三郎も若い役者たちも、「やらさせていただく」と口にして、違和感を覚えないのだと思ふ。
若い役者はとくにさうなのだらう。
だつて玉三郎が云ふのだもの。
違和感のあるわけがない。

「ら抜きことば」がすでにかなり浸透してゐるのとおなじやうに「さ入れことば」も自然なものに感じる向きが増えてゐるやうに思ふが、それに対して「違和感を覚える人も多いんですよ」と云つてもあまり効果はないやうな気がする。
だつて周囲の人々は使つてゐるのだもの。

「「さ入れことば」は文法的に間違つてゐますよ」と教へることはかんたんだ。
でもそれで「さ入れことば」を使はなくなるかといふと、それはないんぢやないか。
だつて遣ひなれたことばなのだもの。

そんなわけで、この本を読んだらほんたうにミスのない文章が書けるのかといふと、その限りではない。
漢字の使ひわけについても、「常用漢字表を見ろ」といふわりには「常用漢字表にしたがつてゐればいいわけでもない」とも書かれてゐる。

おそらくミスのない文章を書くには「自分の書いたことを疑つてかかる」こと、それにつきるのだらう。
内容はもちろん、ことば遣ひ、文字の選び方に至るまで、疑つてかかる。
さうすれば、あるていどミスを防げるのではあるまいか。
でも、疑つて、なにが正しいかつてどうやつて確認すれはいいのだらう。
辞書だつて人間の作つたものだ、絶対正しいとは限らない。
文法にしたつて人によつて説が違つたりする。

ミスのない文章など書けるわけがない。
さういふことなのだと思ふ。

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Friday, 01 December 2017

11月の読書メーター

11月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1954
ナイス数:24

A Tale of Two CitiesA Tale of Two Cities感想
同じことばのくり返しの生み出すリズムに乗せられてぐんぐん読めてしまう。再々読くらいだと思うけれど、おどろくほど記憶にない部分と一字一句覚えている(という気になるだけでほんとはそんなに覚えてなどいない)部分とがある。この何日間か、電車に乗るときに読むようにしていて、電車に乗るのが待ち遠しかった。そんな小説。
読了日:11月02日 著者:Charles Dickens
シナリオの構成シナリオの構成感想
構成についてはもちろんシナリオに関する考察などおもしろい。「シナリオは会社勤めのような気持ちで書くのがもっともよい」と規則正しい執筆生活を勧めるあたりは最近のライフハックにもよく見られる話だ。シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」、自身の「裸の島」、原作と映画両方の「エデンの東」の構成の解説がおもしろい。溝口健二について書いた文章も興味のある向きにはおもしろいのではないかと思う。
読了日:11月06日 著者:新藤 兼人
トップランナーの図書館活用術 才能を引き出した情報空間 (ライブラリーぶっくす)トップランナーの図書館活用術 才能を引き出した情報空間 (ライブラリーぶっくす)感想
12人のトップランナーへのインタヴュー集。学術文体で書かれた著者によるまとめにもあるとおり、みな図書館に対して肯定的というのがおもしろい。そうなるだろうと考えて選定したわけではないというが、無意識のうちにそう選んでしまったようにも思える。図書館以外の話も大変興味深い。自分の図書館とのつきあいについて記憶を掘り起こしてみようかな。
読了日:11月09日 著者:岡部 晋典
先生は教えてくれない大学のトリセツ (ちくまプリマー新書)先生は教えてくれない大学のトリセツ (ちくまプリマー新書)感想
卒業後のことを見据えて大学時代を過ごそう、という内容なのだと思う。いったん卒業して就職してしまったらほぼ不可逆な現状を考えるともっともなことではあるのだが、大学に入学した時点でどうなりたいかわかっている学生ってどれくらいいるんだろう、とも思う。恵まれた環境に育った人なら選択肢もたくさんあろうがなあ。それとは別に講義中の学生の私語について書かれていたのが興味深い。何しに大学に行ってるの?
読了日:11月11日 著者:田中 研之輔
今夜ヴァンパイアになる前に―分析的実存哲学入門―今夜ヴァンパイアになる前に―分析的実存哲学入門―感想
原題は"Transformative Experience"。あることを経験したらいまの自分とはまた違う自分になってしまうようなことを体験するかどうか決める際に何を決め手に判断するのか。例えばヴァンパイアになれるとして、なるかどうかどう判断するのか。解説によるとこの本を読んだあと「ジョジョの奇妙な冒険」を読み返すといいのだそうな。
読了日:11月14日 著者:L・A・ポール
警視庁草紙 下 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)警視庁草紙 下 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫)感想
今世紀の初め頃この話を原作としたTVドラマがあった。上巻はともかく、下巻の趣はあのドラマにはなかったように思う。ドラマはドラマでおもしろかったんだけどね。話がどんどん収束していって、読み直すと「これがああなるのか」とか「この人とあの人とが関係あるのか」というのが見えておもしろい。ときどきメタになるのも実は好きだ。
読了日:11月20日 著者:山田 風太郎
A STUDY IN SCARLET (annotated)A STUDY IN SCARLET (annotated)感想
そういやブリガム・ヤングが出てくるんだったっけか、と思いながら読み返す。当時はこういう受け取られ方をしていたのか知らん、とか。
読了日:11月25日 著者:Sir Arthur Conan Doyle

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Wednesday, 01 November 2017

10月の読書メーター

10月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:1905
ナイス数:19

The Annotated Lolita: Revised and UpdatedThe Annotated Lolita: Revised and Updated感想
冒頭の「アナベル・リー」が何をか言わんや。なぜアリスはありでロリータはなしなのか。アリスは劣等感にはつながらないがロリータは直結するからか。などと考えながら読んだ。確かに「mauve」、何度か出てくるなあ。注釈はざっと眺めたていどだが、やはりあるとありがたい。読み返すときに注釈もじっくり読むつもり。
読了日:10月03日 著者:Vladimir Nabokov
大学生・社会人のための言語技術トレーニング大学生・社会人のための言語技術トレーニング感想
初読のときに「理屈っぽい人間は嫌われる。そうでない社会を作らないと言語技術は広まらない」と書いたが、でもやっぱり自分に足りないのはこういうものの見方なんではないかと思って再読。
読了日:10月06日 著者:三森ゆりか
面白くて眠れなくなる化学 (PHP文庫)面白くて眠れなくなる化学 (PHP文庫)感想
前書きに「その日やったことを夕食の時に生徒が家族に話すような授業を目指す」という旨のことが書いてあって、それだけでOKという気分。中学の時の理科の教師はよく「理科の先生は命がけだ」と云っていたけれど、そのとおりだ。時折「ここにもうちょっと説明があれば」と思うところもあるけれど、このヴォリュームだから仕方がないか。
読了日:10月08日 著者:左巻 健男
弟子弟子感想
孔子の泄冶評を知ったのはこの話でだったと記憶している。それまで儒教というのはあるじへの絶対といっていいような服従を強要するものだと思っていた。「ベンチがアホやから野球がでけへん」でもいいんだ、と思った。その後、尽くすに足る相手を見つけることができるなら、そして自ら働くことができるなら。主人公にはそこのところを理解してほしかったな、と当時も思った。
読了日:10月11日 著者:中島 敦
牛人牛人感想
元ネタは何度か読んでも覚えられないのにこれだと一発で覚えてしまう。それでも時間が経つと「はて自分はいったいなにでこの話を読んだのだろう」と悩むことがある。でも話は忘れない。
読了日:10月12日 著者:中島 敦
和歌でない歌和歌でない歌感想
三十前なのかー。
「和歌」とはなんだろう。いま「和歌」と呼べる歌がどれほどあるのか。などと考え乍ら、自分もまた喘鳴をわれと聞きつつ読んだ夜を思い出す。
読了日:10月12日 著者:中島 敦
論語 (中公文庫)論語 (中公文庫)感想
中島敦の「弟子」を読んだ勢いで再読。でも通読するような本じゃない気がする。全部一気に読むことも必要だけど、ゆっくり時間をかけて読んだ方がよさそう。そこから一字一字を問題にするようになったらおしまいではあるけれど。世の中、探せば出てくることは覚えなくてもいいという風潮があるが、覚えておいた方がいいこともある。この本に書かれていることもそのうちの一つなんじゃないかな。著者独自の新釈もあるけど、出版年が古いのでどれくらい「新」なのかはわからず。
読了日:10月19日 著者:孔子,貝塚 茂樹
老子 (講談社学術文庫)老子 (講談社学術文庫)感想
この本の解説とは違うけれども、無にたどりつくにはとにかくあれこれつめこむことが必要なのではあるまいか。ひたすらつめこんで、つめこんだ先にあるのが無なのではないか。そんな気がした。
読了日:10月23日 著者:金谷 治

読書メーター

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Sunday, 01 October 2017

9月の読書メーター

9月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1583
ナイス数:25

Nabokov's Favorite Word Is Mauve: What the Numbers Reveal About the Classics, Bestsellers, and Our Own Writing (English Edition)Nabokov's Favorite Word Is Mauve: What the Numbers Reveal About the Classics, Bestsellers, and Our Own Writing (English Edition)感想
古今の著名な英米文学を入手してどの単語をいくつ使っているのかを分析する。それだけの話なのだが、これが滅法おもしろい。これを可能にしたのはコンピュータの技術なのだが、分析の切り口を決め結果を解釈をするのはいまのところまだ人間のようだ。分析にはPythonを用いたとある。久しぶりに電車を乗り過ごすくらい夢中になって読んだ。日本文学でも同じことやってる人いないか知らん。
読了日:09月01日 著者:Ben Blatt
古文の読解 (ちくま学芸文庫)古文の読解 (ちくま学芸文庫)感想
「これからの若者は理系の勉強をするべきだ。それでなければ日本の未来はない」というような考えから書かれた本である、と解説にはある。古典をもっぱらにしない受験生に如何に合格点を取るかを指南する本。そのはずだが、内容は古文に限らず現代文や英文など外国語で書かれた文の読解にも役立つように思える。
読了日:09月09日 著者:小西 甚一
大人のための国語ゼミ大人のための国語ゼミ感想
「お米をとぐ」という表現を見かけなくなったのはこういうところに起因しているのかなあ。お米はいまや「洗う」ものになってしまった。それも「わかってもらいたい」と思えば仕方のないことなのだろう。こどものころから質問力がないので、これを機に鍛えたい。
読了日:09月12日 著者:野矢 茂樹
語彙力がないまま社会人になってしまった人へ語彙力がないまま社会人になってしまった人へ感想
たとえば「偏頗」ということばを職場の打ち合わせの場などで用いたとして、上司や同僚から「語彙力のある人だ」と思われるだろうか。答えは否な気がする。やってみたことはないから絶対とは云えないけれど。最終章にある語彙力の鍛え方は参考になる。外国語の習得にも役立つのではないかと思っている。
読了日:09月13日 著者:山口 謠司
思考ツールとしてのタロット (こどものもうそうブックス)思考ツールとしてのタロット (こどものもうそうブックス)感想
易の参考にと思って読んでみたところ、タロット自体に興味を惹かれることになる。「コレポン(コレスポンデンスの略)」という考え方がとても興味深い。かんたんに云うと連想かと思う。疲れているときは連想力が全然働かないんだよなー。「想像と言葉」や「はぁって言うゲーム」にも興味はあったけど「ひとりじゃできないんだろうなあ」とあきらめていた。機会があったらこの二つも体験してみたい。
読了日:09月15日 著者:米光一成
いとも優雅な意地悪の教本 (集英社新書)いとも優雅な意地悪の教本 (集英社新書)感想
初めて読んだ橋本治は「桃尻娘」で、「世の中ほんとにこうだったらイヤだなあ」と思ったものだった。当時友人にそう云ったら「え、こういうもんでしょ?」と返って来たように記憶している。そういう人の書く意地悪というのはこういうものなのかもしれないなあ。ってあれから何年たっていると思っているのか。
読了日:09月25日 著者:橋本 治

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Friday, 01 September 2017

8月の読書メーター

8月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2457
ナイス数:20

漢文入門 (現代教養文庫 578)漢文入門 (現代教養文庫 578)感想
著者による訳文のうち「当時は流行語かなんかだったんだろうなあ」と思われることばの意味がよくわからない。もしかすると原文の方がわかるのではないかという気がする。現代語訳ってむつかしいんだな。そのときだけわかればいいという面もあるとは思うけれど。読んでいて「漢文って楽しそうだな」と思える。
読了日:08月02日 著者:魚返 善雄
The Secret Life of Pronouns: What Our Words Say About UsThe Secret Life of Pronouns: What Our Words Say About Us感想
シャーロック・ホームズが外見などからその人の職業その他をあてる、その種明かしを読んでいるような気分になる本。話し言葉や書き言葉から代名詞や冠詞、前置詞といった機能語を数えてその使用方法から話し手・書き手の性格を読み取る。日本語でもおなじような結果になるというけれど、日本語の場合はなにを数えるんだろう。
読了日:08月10日 著者:James W. Pennebaker
新八犬伝 結 (角川文庫)新八犬伝 結 (角川文庫)感想
やっと親兵衛が登場して、でもすぐに物語は終わる。この巻ではとうとう父の仇を討った道節がしかし虚しさを覚え、この世の地獄を作り出すのは力や権力を持った者だと悟った親兵衛はひとたびは侍を捨てようと思う。そんな中、さもしい網干左母二郎にもいいところがあったりしてちょっと和む。「新八犬伝」も録画が見つかったりするといいのにな。
読了日:08月15日 著者:石山 透
史記 12 列伝 5 新釈漢文大系 (92)史記 12 列伝 5 新釈漢文大系 (92)感想
このくだりを読んでいると、「儒者って、ダメぢゃん?」という気がしてしまうのは僻目なのか。単に武帝に阿った人が多いからそう見えるだけなのか。竇太后って呂后の下で生き残ってきた人なんだよな。そう思うともう一度そのくだりを読み直したいという気になる。
読了日:08月20日 著者:青木 五郎
町奉行日記 (新潮文庫)町奉行日記 (新潮文庫)感想
一作目の「土佐の国柱」で、一豊の望んでいたことは「民の心をひとつにする」であって、「郷士の除外」ではなかったのではないのかなあ。作者はそう思ってはいないのかもしれないが、読んでいてそういう感じがした。「云わなくても通じる」という話が多い。そういう物語、いまの人も好きだよね。表題作はセリフもちょっと洒落ていて、ドラマ化・映画化されるのもむべなるかなといったところ。
読了日:08月22日 著者:山本 周五郎
目白雑録 (ひびのあれこれ)目白雑録 (ひびのあれこれ)感想
他人に対する批評ももちろん、喫煙室にたむろするぼーっとした喫煙者であるおじさんたちと同類であることを否が応でも思い知らされつつタバコはやめられないなどと自らのことを書く部分も楽しい。
読了日:08月24日 著者:金井 美恵子
概説文語文法 改訂版 (ちくま学芸文庫)概説文語文法 改訂版 (ちくま学芸文庫)感想
参考書としてではなく、一般書として文法書、それも文語の文法書を書こうという意欲・情熱はどこから生まれてくるのだろう。そんなことを思いながら読む。冒頭の「文法とは」とか「文・文章・文節・語」などの説明は口語にも置き換えられる。文法を覚える意義などもとても興味深い。
読了日:08月28日 著者:亀井 孝

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