あの曲はどこへ行つた
小学校には登校の曲と下校の曲があつた。
登校のときはシュトラウスの「美しき青きドナウ」で、下校はサン=サーンスの「白鳥」だつた。
この話をすると、「下校の音楽はドヴォルザークの第九番第二楽章だつたな」といふ人も多い。
昨今の小学校には登校の曲も下校の曲もないやうだ。
さういや自分が通つてゐたころも、ご近所からの苦情があつたといふ。「うるさい」つて。
いやいや、うるさいもなにも、小学校のそばに引つ越してきたのはそちらでせうがよ、といふ話なのは、小学校のそばには新築の団地しかなかつたからだ。
まあでも、「うるさい」といふ声は多かつたのだらう。
小学校といへば、運動会で流れる曲は大抵きまつてゐた。
「クシコスポスト」「電光と雷鳴」「トリッチ・トラッチ・ポルカ」……
いまでも徒競走の場面を思ひ起こせば脳内に流れる曲ばかりだ。
題名は知らなくても知つてゐた。
いまはかういふことはないらしい。
なんだらう。JASRACに文句でも云はれたのかなあ。
家族はクラシック音楽などほぼ聞かなかつたから、学校で出会ふ曲は貴重だつた。
授業ではない場で聞けるといふことがまた貴重だつたと思ふ。
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