1月の読書メーター
1月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2190
ナイス数:74
思考の整理学 (ちくま文庫)の感想
メモを取りながら聞くよりもただ聞くことに専念した方がいいというのはその通りだが、ある程度知識を持っていることに限るようにも思う。わからないと思うとそこでつかえてしまうからだ。メモ術・ノート術の類は人によって向き不向きがあるというのもその通りだなあと思いつつ読んだけれど、いわゆるノート術をあまり快く思っていないのかなという記述も見て取れる。自分にあった方法を見つけるところから思考の整理が始まるのかもしれない。長年積読状態にしてあったが、この年末年始、書き込みなどしつつ布団の中で読んだ。
読了日:01月03日 著者:外山 滋比古
父のこと (中公文庫)の感想
たまに吉田健一が読みたくなる。だがこの本はそういう本ではない。対談部分が多いからということもあるけれど、吉田健一調の文体は影を潜めている。そこがまたおもしろい。吉田茂にしても吉田健一しても、幼い頃から実家から養家へとうつり(健一は祖父母宅ではあるが)さらにまた移動したりしている。明治の元勲には同様の人が多かった印象があるのだが(調査はしていない)、そうした流れの最後の人々なのかなあ。これもちょっとおもしろいと思う。共産主義と民主主義は対立する概念じゃないぞと思いつつ、ジーヴス好きって趣味がいい。
読了日:01月07日 著者:吉田 健一
ロゴスと巻貝の感想
詩(和歌・短歌や俳句も含む)って、暗唱してはじめて血肉になるものなんだな。それを詰込学習としかとらえられない向きがいるのは仕方がないとして、ググればわかる当節だけど、自分の中にあるのとないのとでは大違いなんだろう。自分は記憶している詩などほとんどないから実際にはどうなのかわからないけれど、この本を読んでそう思った。エッセイもいいけれど、新しい句集が出ないかなあと待っている。
読了日:01月13日 著者:小津夜景
夜と霧 新版の感想
イーディス・ボーンがなぜいつ終わるとも知れぬ監禁に耐えられたのか、不思議に思っていた。病院に行っていつ自分の番が来るかわからない不安に悩まされる自分には到底わからないことだと思っていた。その答えがここにある。自分は物理的には囚われの身でもないのに生きていないも同然なのだということも知った。
読了日:01月14日 著者:ヴィクトール・E・フランクル
東京マッハ 俳句を選んで、推して、語り合うの感想
「え、句会ってこんなにおもしろいものだったんだ?」というのが東京マッハを知っての感想だった。つねづね「全員が全長52メートル」から「夕焼けを食べて吐き出す大伽藍」になるの、すごいなと思っているんだけど、こうして時系列に並べられると実感が深まる。チケット買った回だとその場の雰囲気のようなものは感じられないなと思うものの、却って冷静に読めていい気もする。句会、やってみたいんですよ。作らない句会(それは千野帽子の本の方か)。いつかできるかなあ。
読了日:01月21日 著者:東京マッハ,千野帽子,長嶋有,堀本裕樹,米光一成
カブキの日 (新潮文庫)の感想
歌舞伎とカブキとは違うものながらつかずはなれずの関係でそこがまず気に入った。死んだ坂東三津五郎が八十助のころ「喫茶店に行くとお客さんがみな今月の芝居について話している、そんな風になるといい」という旨のことを語っていたことがあって、この小説世界ではそれが現実なんだろう。その熱さ・圧がないと起こりえない話でもある。穂村弘がNHKアカデミアで著者と話したと云っていたのがきっかけで手にとった本で、「カブキの本義」と穂村弘のいう「歌人の読み」につながる部分があるのも面白かった。
読了日:01月27日 著者:小林 恭二
歌舞伎通の感想
芝居のあらすじの書き方が実に簡明で、「ここまで略していいんだ!」と思うことしばしば。自分だったら「ここは実はこうなんだけど」と余計なことまで話してしまうところだ。俳句に通じているからということもあるのかなあ。勘九郎時代の十八代目中村勘三郎の芝居を追いかけている感じで、勘九郎との対談を読んでいると本人の話しているようすがありありと脳裡に浮かぶ。舞台役者は大別して内面派と外面派がいると喝破する点などはなつかしの名優の中に先代の雀右衛門がいないのでなるほどと思わせる部分も。でも宗十郎はいる。嬉しい。
読了日:01月28日 著者:小林 恭二
新釈四谷怪談 (集英社新書)の感想
四谷怪談について書いたのは、おそらく見たからだろう。芝居を見て書きたくなったのに違いない。そんな気がする。江戸のことばができたのが化政のころとあって、それで南北のセリフはむつかしいのかなと思った。四谷怪談に興味があるというよりは著者の書くものを読みたかったから読んだので、その点では満足な内容だった。それにしても南北の作品を何点かあげておきながら、なぜ『謎帯一寸徳兵衛』については言及していないのか。著者であれば段四郎か孝夫時代の仁左衛門で見ていても不思議ではない気がするが、見てない可能性も高いか。
読了日:01月31日 著者:小林 恭二
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