非・実盛物語
髪を染めたことがない。
理由はとくにないが、やはり髪が傷むといふからかな。
そろそろ年代的には白髪染めを使ふころだが、なぜ白髪を染めなければいけないのかよくわからない。
白髪なら小学生のころからあつたからだ。
そんなわけですでに鬢に白髪の目立つやうになつて久しいが、染めやうといふ気にならない。
めんどくささうだしさ。
髪の毛が伸びるとみつともないことになるし。
さうなる前に染めなほすのもめんどうだ。
さう、すべての原動力は、といふか反原動力は、「めんどくさい」である。
めんどくさくなかつたらするのだ。
めんどくささより楽しさとかやつてみたさが先にたてばする。
楽しさうぢやないんだよね、髪の毛を染めるのつて。
そもそも髪の毛にまつはることといふのはやりなほしがきかないことが多い。
まづ髪の毛を切るといふことがそれだ。
髪の毛を切りに行つて、「今日はどうしますか」と訊かれ、「いつも通りに」で済めばまあいい。
それだつてもし万が一床屋さんなり美容師さんがうつかりしてしまつた、といふこともありえないとはいへない。
でもまあ「いつも通りに」してもらへたらだいたい予想はつくからやりなほしのきかないことにそんなにこだはる必要はない。
問題は冒険をするときだ。
いつもと違ふことをする。
思ひきり短くしてみるとか。
普段はかけないパーマをかけてみるとか。
失敗しても決してもとには戻らない。
染髪もまたさうだ。
一度染めてしまつたら、新たな髪の毛が伸び切るまではどうにもならない。
なんで髪の毛のことつてさうなんでせうね。
そんなこともあつて、でもやはり一番の理由は「なぜ白髪を染めて隠さなければならないのか」がよくわからないから、それで染めてゐない。
最近は芸能人や有名人のあひだで髪の毛を染めないのが流行つてゐるらしい。
最初に見たのは近藤サトだつたらうか。
Webでインタヴューのやうなものにこたへてゐるのを見て、「白髪を染めないことについて、こんな云ひ訳といふか理由づけといふかをしないといけないんだ。世の中の人に対してそれを表明しないといけないんだ」と驚いたのを覚えてゐる。
芸能人・有名人として世に知られた人々だからさうしなければならないのかもしれない。
さはさりながら、この時思つたことがある。
おそらく白髪といふのは暗黙の了解で染めるものなのだ。
自分のやうにはふつておくのは世の常識に反することだつたのだ。
と、そのやうに理解したいまでも染めてはゐない。
そのうち白髪と黒い髪とのバランスがをかしくなつてきてみつともなくなつたら染めやうとは思つてゐる。
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