やはりチェスの対局場面: The Queen's Gambit
The Queen's Gambit はNetflixでドラマを配信してゐることを知らずに読んだ。
いや、以前は知つてゐた。TwitterのTLでにぎやかだつたからだ。
なんかおもしろさうなドラマだなと思つたら、原作があつたのね。
しかも、ドラマが話題になつてからずいぶんたつてゐる気がする。
とりあへずKindle用のサンプルを落としてきて、読み始めたら止まらなくてそのまま買つてしまつた。
それまでは題名からなにかを犠牲にして勝利(とか栄誉とか財産とか)を得る話なのかと思つてゐた。
それにしても何がおもしろかつたのだらう。
主人公は八歳にして母親を失ひ孤児院に入る。
そこで鎮静剤を与へられて育ち、あるとき、黒板消しの清掃(懐かしいね)をしに行つたら地下でひとりチェスを指してゐる用務員を見かける。
これが主人公とチェストの出会ひだ。
主人公は用務員がひとりでチェスを指してゐるのを見て駒のだいたいの動かし方を覚え、ついで用務員からチェスを教はる。
このあたりから主人公の非凡さが描かれていき、どうなるんだらうといふ興味でどんどん読み進んだのだらうと自分では思つてゐる。
また、「The Queen's Gambit」といふ題名から、主人公ベス・ハーモンはなにかしらを犠牲にして成功するのだらうかと思つたから、といふこともある。
なにを犠牲にしてなにを得るのか。
さういふ興味、ね。
でも、なんといふか、ところどころ「うーん、やはりさうなるかー」とがつかりした部分はある。
たとへば男女がひとつ屋根の下にゐたら床を共にしないとならないんですかね、とか。
なんだかんだいつて友情が大切なんだな、とか。
身体を動かさないことにはどうにもならないのか、とか。
話の緩急のために必要なんだらうなとは思ふけれど、なんだか月並みでがつかりさせられる。
さういふ現実は持ち込んでほしくなかつたなーといふかね。勝手な感想だ。
だつてたとへばこれが男同士だつたらひとつ屋根の下にゐてもどうといふことにはならないわけでせう。
さういふ種類の話であるならさうなるのかもしれないけれども、この小説の感じではさうはならないはずだ。
さういふのがね、なんかもうほんと、「あーあ、はいはい」つて感じになつちやふんだよなあ。
とはいへ、最後まで引きずられるやうに読んでしまつたのは、やはりチェスの場面のおもしろさだらうなあ。
チェスは駒の動かし方がわかるくらゐで全然指せず、MacOSについてくるチェスのアプリケーションでコンピュータvsコンピュータの対局を見ることがあるくらゐだ。
それでも対局場面はどれもとても緊迫感があつておもしろい。
一番好きなのは、ベスがそれまでの対局の中で一番美しい手を指してしかも間違へなかつたのに負ける、といふ場面だ。
なんておそろしいんだらうと思ふ。
きつとチェスや囲碁、将棋をする人はさういふ目にあつたことがあるんだらうな。
その絶望感たるや如何に。
さうして負けた相手に、ベスは再度挑む。
おもしろいぢやあないか。
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