裏表在宅勤務
在宅勤務にすつかり慣れてしまひ、もう今後一生これでいきたいくらゐだ。
とにかく、通勤時間といふのは無駄すぎる。
「さうはいつても通勤時間がいい運動になるでせう」と云はれたりもするが、とんでもない。
いや、運動にはなつてゐるのだらう。
だが、食事の時間が不規則になつたり通勤電車その他でストレスがたまつたりするからだらう、出勤してゐたときの方が体重が増えてどうしやうもなかつた。
在宅勤務になると、自然と規則正しい時間にほぼ自分の作つたものを食べるやうになるせゐか、自然と増えた体重も減つた。
運動不足になつてゐることは確かなので、これはなんとかしたいが、いづれにしても、出勤してゐるときの方が不健康だつたことは間違ひない。
なにしろ歩いてゐて突然胸が苦しくなつてそれ以上歩けなくなつたりしたしな。
そんな「Viva, 在宅勤務!」生活にも、「これはちよつとなー」と思ふ部分はないわけではない。
本屋や文房具屋に行けないといふのがまづひとつ。
徒歩圏内に本屋も文具屋もない。
文具は、まあ100円ショップで入手できないこともないが、書籍や雑誌はどうにもならない。
月刊誌を買つてゐるのでこれがなかなか痛い。
去年の四月はAmazonはじめ通信販売をしてゐる書店を軒並みあたつてみたがどうしても買へない雑誌があつた。
みんな、考へてゐることはおなじだからだらう。
幸ひといふか不幸にしてといふか五月から出勤するやうになつたので、かたつぱしから通勤経路上にある書店を回つてなんとか一冊見つけ出したのはよい思ひ出……といつてよいのかわるいのか。
あまりいい思ひ出ぢやあないね。
その後はhontoその他で手に入れることができてゐるので、まあいいんだけど、でもやつぱりリアル書店やリアル文具店に行つて実物を手に取りたいといふのはあるんだよね。
また、銀行に行けないといふのもある。
ネットバンキングがあるぢやないかといふ向きもあらうが、ネットバンキングつてあれ、人間が作つてゐるんですよ。
といふことは必ずなにかしら間違ひがある。
もしかしたらやつがれのやうな人間が作つてゐるかもしれない。
そんなもの、信用できるわけがない。
また、ネットバンキングが使へたとしても現金は手に入らない。
世の中、どうしても現金でないと支払へないといふものがある。
銀行なら徒歩圏内にいくつかあるが、残念ながらメインバンクはない。
そしてメインバンクのATMは土日に使ふと手数料がつく。
どうしたらいいのかー、と時々途方にくれるが、近所の銀行でなんとかしてゐる。
さうするしかないし。
最後のひとつは、仕事帰りに芝居や映画に行けないといふこと。
行けないことはないが、通勤してゐるときのやうに気軽には行けない。
かなり早上がりしないと間に合はないし。
それに在宅勤務をしてゐるのに芝居見物に行くといふのはどうだらう、といふ話もある。
そこで感染してしまつたらお話しにならない。
云ひ訳もたたない。
世間が認めてくれないでせう。
世間なんて気にしなければいいのかもしれないが……そこは浮世といふもので。
そんなわけで、なにごともいいこともあれば悪いこともあるといふ、それだけのことだらう。
そして、そんな悪い面があつても、それでもなほ在宅勤務は素晴らしい。
今後もずつとかうだといいんだがなあ。
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