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Friday, 23 April 2021

東奔西走ドクター・フー

あひかはらずHuluで『ドクター・フー』を見てゐる。

『ドクター・フー』は英国BBC放映の、五十年以上続いてゐるTVドラマだ。
文字通り宇宙(宇宙の宇は空間、宙は時間の意)を旅する異星人のドクターと旅をともにする地球人の冒険の話である。

見始めたのは去年の12/30。年末年始の休みに入つてからのことだ。
最初に見たのはシーズン(以下、S)3エピソード(以下、E)10の「Blink (まばたきするな)」だつた。

それには前段があつて、自分にとつて最初のドクターは十三代目だ。
一昨年の夏、ロンドン旅行の際、行き帰りの機内で見た。
ドクター・フーといふ長いこと放映してゐるTVドラマがあることは知つてゐた。
機内サーヴィスでどんな作品が見られるのか確認して、「これが音に聞くドクター・フーか」といふので見てみたのだつた。
2019年の新年スペシャルだつたと思ふ。
行きの機内で見やうとして、なんだか怖さうだつたので見るのをあきらめたのだが、なにしろロンドンまでは遠い。
そんなわけで、見た。
こ、怖いけど、そ、そんなに怖くないぢやん。
登場人物も多いし、主人公、なんだかやたらとハイ・テンションで喋りまくるし、敵は「Exterminate!」だし、おもしろいぢやん。

滞在中に見られるかと思つたが、かなはなかつた。残念。
といふわけで、帰りの機内でも見た。

しかし、帰国しても見る機会がなかつた。
動画配信サーヴィスには入つてなかつたしね。
BSもCSも含めてTVで放映してゐるやうすもなかつたし。
近所のレンタル・ヴィデオ屋はなくなつて久しい。

ところが、とある本を読んで気が変はつた。
ジェイムズ・グリックの『タイムトラベル』だ。
この本で、『ドクター・フー』の「Blink」といふエピソードのことを知つた。
いはゆる「ブートストラップ・パラドックス」の話だといふ。
すつごくおもしろさう。

さういふわけで、Huluに入つて最初に見たのが「Blink」なのだつた。
いきなり途中からでわからなくないのか、といふ疑問もあらう。
まつたく問題なかつた。
この話は『ドクター・フー』の中でも人気の高いエピソードだが、ドクターはほとんど登場しない。
物語だけで視聴者を引きずり込む魅力がある回だ。

その「Blink」もものすごーく怖かつたんだな。
先に云つてよ、ジム。
よく見たな、自分。
怖かつたし、パラドックスのことを考へると脳内が活性化してくるやうなわくわく感を覚えつつも、なんだか切ない部分もある。
好きなエピソードのひとつだ。

そこからS1E1の「Rose(マネキン・ウォーズ)」に戻り、時折一度見たエピソードを再視聴しつつ、いまは2015年のクリスマス・スペシャルを見終へたところだ。
ドクターも九代目から十二代目まで四人(プラス一人)見てきた。

おもしろいのは、いま十二代目のドクターのシリーズを見てゐても、たまに以前のドクターのエピソードを見たときに自然と受け入れられることだ。
「このドクター、違ふ」といふことがない。
また、ドクターが再生してまつたく別の人物に変はつてしまつたときもさうだ。
九代目から十代目のときは、入れ替はりに多少時間をかけてゐたやうに思ふが、十代目から十一代目に変はるときなどはあつといふ間に十一代目を受け入れることができた自分にびつくりしたものだ。

まあ、個人的な資質かもしれないけれどね。
「何代目のドクターが好き」とか個別の好みがあつたりすると、このかぎりではないのかもしれない。
S1E1から見始めたときは「ドクター、いいなあ」と思つてゐたし、十代目は「さすが人気No.1ドクターだ」と思ひながら見てゐた。
十一代目は「このエキセントリックさ、ドクターとしか思へん」と思つてゐたし、十二代目にはふしぎな説得力があるしとにかく絵になる。

ほんとの理由はわからないけどね。
ひとつには、各エピソードはいはゆるあて書きに近いものがあるのではないかと思ふこともある。
九代目ドクターのエピソードはクリス・エクルストンに、十代目のはデイヴィッド・テナントに、といつた感じで、ドクターを演じる俳優に合はせた部分があるのではあるまいか、といふことだ。
たとへば、十代目ドクターのマスターとのエピソードなどはデイヴィッド・テナントが一番しつくりくるやうな気がする。脳内シミュレーションの結果だからたいした精度の話ぢやないけどね。
クレイグとのエピソードはマット・スミスが、アシルダとはピーター・カパルディが合ふ。
そんな気がする。

そんなわけで、時に以前のシリーズを見てはつづきに戻つてきたりと、ドクター・フーのタイムラインをあちこち行き来してゐる。
さういふ見方もとてもドクター・フーのやうな気がして、いいんぢやないかな。

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