途方に暮れたそのあとで
アダム・グラントの『Think Again: The Power of Knowing What You Don't Know』といふ本を読んでゐる。
中に、ロン・バーガーといふ小学校の教師の話が出てくる。
ロンは、たとへば生徒にこんな問題を出す。
動物の分類について実際の分類法を教へるのではなく、各自で考へてくるやうにといふ。
生徒は各々考へてきたことを班のメンバに披露し、それをもとによりよい分類法を考へる。
各班はクラス全体に結果について報告する。
複雑な問題を前に、生徒は時に途方に暮れることもある。
でもロンはすぐに助けの手をさしのべることはない。
途方に暮れてどうしたらいいのかわからない状態にあることを楽しめるやうにしたいと思つてゐるからだ。
実際、途方に暮れた状態(本ではconfusion)に興味と知りたいと思ふ気持ちで立ち向かつたときに、人はそれを「楽しい」と思ひ、「好き」と思ふものらしい。
自分にとつてのタティングレースだな。
はじめて即、はまつた。
動くはずの芯糸が動かない。
なぜだらう。本(藤重すみの『かわいいタッチングレース』)の通りにやつてゐるのに。
この状態が一週間近くつづいたと思ふ。
最初に使つたのは、手元にあつたオリムパス金票40番だつた。
あまりにどうにもならないので、途中であきらめてオリムパスのエミーグランデに変へた。
どうやら太い糸といふのがよかつたのだらう。
あるいはそれまでさんざん悩んできたことがよかつたのかもしれない。
「目をうつす」といふことがやつとわかつて、芯糸が動かせるやうになつた。
それでリングが作れるやうにはなるのだが、チェインが作れるやうになるには次の本を買つたあとだつた。
なぜなら『かわいいタッチングレース』に載つてゐたシャトルを二つ使ふ方法はスプリットリングの作り方だつたからだ。
でもスプリットリングを使はない、リングとチェインだけの作品もシャトルを二つ使ふと書いてある。
途方に暮れたまま、藤戸禎子の『華麗なるレース タッチングレース』を求め、そこでチェインの作り方を理解することができた。
そして、作れるものが飛躍的に増えた。
そんなわけで、タッチングレースといふかタティングレースをはじめてまがりなりにも作品と呼ばれるやうなものが作れるやうになるまで、おそらく二週間はかかつてゐると思ふ。
我ながらよく途中であきらめなかつたな、と思ふ。
おそらく、なんとかして作りたいといふ欲と、どうやつたらできるやうになるのかといふ興味とが強かつたからだな。
タティングレースといふものがものめづらしかつたから、といふこともあるのかもしれない。
なにしろ周囲にタティングをしてゐる人はひとりもゐなかつたからね。
そんなわけで、先日、以前作つたエジングを出してきて目数を数へておなじものを作つてみた。
リハビリなので、ちやんと仕立ててはゐない。
ものは『かわいいタッチングレース』に出てゐたリングだけで作れるエジングだ。本には栞と書いてあつたやうに思ふ。
おそらく、藤重すみ作品の中で一番好きなものだ。
もう一度、今度は栞にするつもりで作つてみるつもり。
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