スマートフォンとマナー
自らに課してゐるマナーがいくつかある。
たとへば絶対このことばは使はない、といふものがある、とかね。
スマートフォンに関するものでいふと、食べてゐるときにはスマートフォンは手にしない、といふのと、人と一緒にゐるときはスマートフォンは見ないし見るとしても相手に断つてからにする、といふのがある。
いまどきの人間とは思へない?
さうかもしれない。
でも失礼でせう、友だちと話してゐるのになにも云はずにスマートフォンを取り出して見たりしたら。
さう思つてゐたんだけれど、それもまた他人行儀なのかな、と思ふことがあつた。
歌舞伎座脇の文明堂カフェでのことである。
その日、やつがれの隣にはそれぞれ男女連れが座つてゐた。
右側はことばも丁寧で出会つてまもない感じ。
左側はもう長いことつきあつてゐる感じだが、右側より若く見えた。
左側の二人は注文が済むとどちらともなくスマートフォンを取り出してずつとその画面を見てゐる。
そのあひだ会話はまつたくない。
右側はといふと、男の人が自分が如何に健康に気を遣つてゐるかをその日食べてゐるものや普段のトレーニングの話でそれとなく誇示してゐて、女の人はそれを聞いて適切に相槌など打ちつつ仕事の話でそれとなくみづからをアピールする、といつた感じだつた。
スマートフォンなど一度も取り出さなかつた。
どうも右側の二人は、お見合ひの場で「あとは若い人たちで」と云はれて二人きりになつた感じ、とでもいつたやうな風情だつた。
もしかしたらお見合ひサイトで出会つたのかもしれない。
そんな感じ。
つまりは、気のおけない相手と一緒のときは、別段相手のことを気にしなくてもいいのだ。
一緒にゐるんだからそれでいい。
だから二人でお茶をしにきても、互ひにそれぞれのスマートフォンに没頭したとしても、問題ない。
さういふことなのだらう、とのその時思つた。
だつて人と一緒にゐるのに、とかいつてゐる方が古いのである。
良し悪しはこの際おく。
自分はなんでこんなところで意固地になつてゐるのかな。
新しいことを取り入れられずにゐる。
でも誰も云はないぢやん、「いま世の中はかうなつてゐるんですよ」とは。
自分で世の中を見て判断するしかない。
世の中を見る力がないのか。
判断する力が弱いのか。
両方かな。
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