このままの方がよいこと
月曜日の夜、ニュースを見てゐたら街頭インタヴューに答へる人が「やつと出勤できます」といふ旨のことを云つてゐた。
どうやら会社に行けることがうれしいらしい。
さうなのか。さういふ奇特な人もゐるのか。
だつて、Blue Mondayといふぢやあありませんか。
月曜日、誰しも出勤登校したくない。
ゆゑに「憂鬱な月曜日」といふ。
英語だから日本だけの現象ではないのだらう。
しかるに、ニュースに出てゐた人は、憂ふべき月曜日に職場に行けるのがうれしいといふやうすでゐる。
出勤、したくないけどな。
この一年……といつて、一年前のいまごろはまだ平日は毎日職場に行つてゐたし、四月こそまるまる在宅勤務だつたけれども五月六月は出勤して、七八九月と在宅勤務で、十月から十二月は出勤したり在宅勤務だつたりといふ日々を送つてきて、一月からまた在宅勤務といふ身ではあるけれども……出勤しないつてなんて楽なんだらうとしみじみ思つてゐる。
まづ、電車の運行状況を気にしなくていい。
どこ線でなにがあつたから自分が乗る線が止まるの遅れるの振替輸送になるのといつたことを、まつたく気にしなくていいのだ。
なんて楽なんだらう。
強風でも「電車が止まるかも」とか心配しなくていいんですよ、奥さん!
通勤時間を気にしなくていいといふのも大きい。
電車は容易に止まるので、通勤時間がどれくらゐかかるのかといふのはその日によつてまちまちだ。
さういふ不確定要素がなくなると、一日の過ごし方も変はる。
ほぼ自分の決めたとほりにあれこれこなすことができる。
なんて楽なんだらう。
それに、この一年、風邪らしい風邪を引いてゐない。
これつて、朝の電車を気にせず眠れるから睡眠時間が長くなつたことと、人と接触しないことと、この二つのおかげだと思つてゐる。
通勤にかかる時間が不規則だからムダに早く家を出ないといけないし、帰りの時間もムダにかかるし、その分睡眠時間が削られてゐる状況で、ごみごみとした通勤電車や駅の構内に長時間ゐなければならず、職場にも人がうようよゐる状況で、風邪を引くなといふ方がムリなのだらう。
そんなわけで、とにかく、出勤したくない。
このまま、仕事に関してはこの状況がずつとつづけばいいのにと思つてゐる。
Viva, 在宅勤務!
心の底からさう思ふ。
世の中には、外出して他人と会ひ、楽しく食事をしたりお酒を飲んだりできないことを、普段行かないところに旅することを、ひどく悲しむ風潮がある。
孤独大臣とか大きなお世話の大臣が誕生するくらゐだ。
それも必要なことだらうけれど、いままでずつと
出かけなければならず人と接触しなければならない状況に苦しんできた人間のことも考へてほしい。
国は会食のことばかり云ふけれど、一人客なら夜遅く外食しても問題はそれほどないはずだ。
なぜそこに思ひ至らないのかといふと、そもそも政治家にならうといふ人は、ひとりでなにかをするといふ発想がないからだらう、とは以前も書いた。
自分とは異なる価値観・生活をする人間のことを考へられない政治家なんて、恐ろしいだけだけどね。
さうとわかつたら次の選挙のときは必ず対立候補に投票するもんね。
といふわけで、いまはとにかく出勤することがあたりまへになるのが恐ろしい。
そんな世の中は来なければいいと思ふ。
もちろん、新型コロナウイルスをおそれず暮らしていけるやうになることを、そしてその日がとにかく早く来ることを祈つてやまない。
だがそれとこれとは別の話なのである。
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