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Friday, 13 November 2020

定期券がない

来月から定期券がなくなる。

在宅勤務が増えてゐるので、職場から定期券代が支給されなくなるからだ。
自前で買へばいいのだが、平日は毎日出勤するのならいざ知らず、さうとも限らない現状ではとてもとても購へるものではない。
何日通へば元が取れるのかと考へたが、なんだかさもしい気がしてしまつてさらに落ち込んでゐる。
先代の桂文治だつたらうか、協会から支給されて定期券を買つてゐたのだらうが高座に向かふとき以外は使はなかつたといふ。
文治はケチだつたといふ話も聞いたことがあるやうな気がするのでもしかしたら別の噺家だつたかもしれないが、いづれにせよさういふ料簡の噺家がゐたのだらう。
自身もさうありたいと願つて、未だ果たせたことがない。

定期券がなくなるといふことは、公共交通機関を利用する機会が減るといふことだ。
我が家から歌舞伎座まで、往復で二千円弱かかる。
いまの七倍相当だ。
それだけで一度幕見ができてしまふ。
考へるだけで気分がふさいでしまふ。

ことは歌舞伎だけではない。
近所には書店がない。
図書館もない。
パン屋や洋菓子店もない。
映画館もない。
手芸屋はもとよりない。
すべて最寄駅まで出ないとない。
映画館と手芸屋はさらに電車に乗らないとない。
そして最寄駅までは往復で五百円以上かかるのだつた。

歩いて行けばいいではないかといふ話もある。
歩くとやつがれの足で片道一時間半ではつかない。
毎日歩いてゐれば、やがて足が慣れて一時間半を切る日もくるかもしれないが、天気のいい日ばかりとも限らないしな。
それに、一時間半もあればほかにいろんなことができるのぢやあるまいか。
時間を取るか金を取るか。
これもまた究極の選択だらうか。

いづれ定年を迎へて退職したらおなじ状態になることはわかつてゐた。
だから芝居見物もそれまでのお楽しみだと思つてゐた。
本屋や図書館にしても片道は歩くやうだらうなと考へてゐた。
それまで足腰を鍛へてをかないと、と我にもあらず思つてもゐた。
それが少し前倒しされただけ。
さう考へることもできる。

いづれにせよ、「文化的」生活とはおさらばだ。
本や毛糸、食料品にしても通信販売で買ふといふ手はある。
送料を払つても、実際に店舗に出向くよりその方が安くあがるだらう。
行ける範囲の書店や手芸店を応援しなければとここ数年はつとめてきたが、それももうできなくなつてしまふ。
出かけたくない質だからそれでもいいんだけどね。
考へてみれば芝居にしても行かない云ひ訳ができたといふ話もある。

定期券代については、各公共交通機関はすでに打撃を受けてゐることだらう。
この三月あたりから在宅勤務をする人が増えてゐるといふ。
定期券を買はない人も多からう。
その分の埋め合はせとして、今後運賃をあげるといふこともあるのぢやあるまいか。
さうしたらますます出かけられなくなつてしまふ。

日々家にこもり、歩いて行ける範囲のところに行つて暮らしていく。
それが分相応といふものなのかもしれない。
芝居見物は自分には過ぎた趣味なのではないかと悩むことも多かつた。

かう書きながら、やはり芝居は見にいくだらう。
映画はちよつとわからないけれど、でも見たいものがあつたら見にいくに違ひない。
ただ、これまでよりは行く機会も減るし、それなりの覚悟をして行くやうだけれど。

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