ボビンがない
ボビンがない。
いや、ないわけがない。
ボビン入れが足りないほどあるのに、糸を巻いてゐないボビンがないのだ。
すなはち、空のボビンがない。
それで余計にレース糸を巻いておけないのである。
タティングレースの替襟は、タティングシャトルAerlitを使つて作つてゐる。
Aerlitはボビンに糸を巻いて使ふシャトルだ。
替襟はそれなりにレース糸を消費するので、予備のボビンにレース糸を巻いておくと糸を使ひきつたときに即次のボビンに付け替へればよい。
それが、余分なボビンが少ないのでしよつ中糸を巻いてゐる。
ボビンを買へばいいではないか。
さういふ意見もあらう。
不思議なことにボビンは買つても買つても十分といふことがない。
この前買つたばかりなにのに、気がつくとどのボビンにも糸が巻かれてゐる。
ミシンを使ふ人もおなじやうなのではあるまいか。
ボビンはあればあるだけ使つてしまふ。
さういふものなのだと思ふ。
以前こんな話を聞いたことがある。
机が狭くて作業ができないので、さらに広い机を使ふやうにしたら、最初のうちこそよかつたものの、気がつくとやつぱり狭いと思ふやうになつた、といふ。
似たやうな経験はある。
持ち歩きたい荷物に比してカバンが小さいのでさらに大きいカバンを使ふやうになつた。
最初のうちはよかつたのに、気がつくとそのカバンでも物足りなくなつてゐる。
それとおなじことだなと合点してからは、カバンが小さいなもつと大きいカバンがほしいなと思ふやうになつたら、敢て小さいカバンを使ふやうにして持ち歩くものを減らすやうにしてゐる。
それで出先で必要なものがなくて困ることもないわけぢやないが、余分なものを持ち歩かなくなることも確かだ。
それで慣れてきたらもう少し大きいカバンにする。カバンには余裕があつた方がいいと思ふからだ。
ボビンもそれと一緒……とはいかないんだよなあ。
ボビンの数が少なかつたら少ないなりに工夫はするとは思ふけれど、それでカバンのやうにものごとが解決するかといふとしない気がする。
現に汲々としてゐるわけだし。
思ひきつて使つてゐないボビンの糸を捨ててしまふといふ手もあるんだけどね。
どうしたものかなあ。
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