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Wednesday, 11 November 2020

孤独の芝居見物

芝居を見てゐると「孤独だなあ」と思ふことがある。
以前もここに書いたやうに、周りが大熱狂の嵐のときにひとり何がいいのかわからず、とてもとても拍手なんてする気にならないときとか。
最近はあまりないかな。
以前はたまにあつた。
最年少子獅子の連獅子の時とかね。
おなじ年に2度目に見た『敵討天下茶屋聚』の時とか。
何度目かの『荒川の佐吉』の時とか。

あまりにもをかしくて笑ひ出しさうになつたのに周りがしーんとしてゐる、なんてなこともある。
『幻想神空海』のときに舞台のど真ん中にデカデカと「楊貴妃之墓」と書かれた墓石とおぼしきものが出てきて思はず笑ひさうになつた。
をかしいだらう? 「楊貴妃之墓」だよ。ありえないよ。逆だよ。ドリフだよ。
しかし、客席はしーんとしてゐた。誰も笑つてなどゐなかつた。もしかしてみんな眠つてゐたのかな。
『幻想神空海』といへば「曹操様」にも笑ひさうになつた。
云はないから。「曹操様」とか。「様」をつける相手に「曹操」は不敬の極みだらうよ。
でも誰も笑つてなかつたなー。をかしいなー。

『幻想神空海』といふと、この「楊貴妃之墓」と「曹操様」と、あと歌六と又五郎とがキョーダインだつたなー、といふことが痛く記憶に残つてゐる。
だが、キョーダインにうなづいてくれた人はゐない。
えー、すっごくキョーダインだつたぢやーん。
もちろん歌六がスカイゼルで又五郎がグランゼルだ。
なんでだれもうなづいてくれないのー(/_;)。全然そんなことはなかつたからだらうか。
さうかもしれない。

こんな感じでとても孤独なのだつた。

今月、国立劇場で「俊寛」がかかつてゐる。
見てゐると、時折「成経は自分の父親がどうなつてゐるのか、この時点では知らないんだよなあ」と思つて不憫になることがある。
今回国立劇場でかかつてゐる部分の後段で、成経の妻になるはずの千鳥は大活躍のあと命を落とす。
その時点でも、まだ成経は自分の父・成親がどうなつてゐるのか知らない。
流されたことくらゐは知つてゐて、でも悲惨な最期を迎へたことは知るよしもない。
まあ、成親の最期については諸説あるので実際のところよくわからないといふこともあるけれど、幸せとはとてもいへなかつたことは確かだ。
成経は、自分も許されたし、もしかしたら父も許されてゐるかもしれないくらゐのことは考へてゐたんぢやないかなあ。
さうすると、あまりものごとを深刻に考へないお坊つちやまに見える成経だが、なんだかかわいさうになつてきちやふんだよなあ。

といふやうな話はあまり聞かないし、やつぱり「芝居を見てもひとり」とか思つちやふんだよね。
秋のせゐかな。

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