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Thursday, 17 September 2020

ソローの日記が気になる

ヘンリー・ディヴィッド・ソローの日記が気になつてゐる。
何年か前に翻訳版が出版されて、しかしハードカヴァで四巻と聞いて躊躇してゐた。

ソローといへば『ウォルデン』だ。
『森の生活』と訳されてゐることもある。
一年間働かずに暮らしていけるだけの費用を算出して、その分だけ稼いでソローはひとり森の中で暮らした。
これをその筋の人がとても気に入つてゐることは知つてゐる。
ちよつと時代遅れのことばでいふとロハス的な、いはゆる環境的に「意識高い系」の人々が好きな本だ。
残念ながらやつがれはちよつと違ふ。
ソローには、ラルフ・ウォルド・エマーソンのやうな超越主義の流れの中にゐる人で、考へたことを実際にやつてみちやふ人、そして無抵抗不服従の人、といふ印象を抱いてゐる。

『ウォルデン』についていふと、しかし、なんか、そんなにすごいことは書いてないんぢやないか、といふ気がしてゐた。
僭越とは思ひつつ、「え、そんなことが考へたくて森でひとりで暮らしてたの?」と思はないでもない。
どういふところが、と訊かれるとうまく云へないが、だつてわざわざ一年間の生活費を割り出して、その分働いて、それで森の中で暮らしはじめたわけですよ。
なんか、どえらいことを考へてゐるんぢやないかと思ふのが人情ぢやあるまいか。

ところが、ソローがすごいのは『ウォルデン』ではなくて、その日誌なのだといふ。
さういやエマーソンもなんだかすごい量の日誌を残してゐるといふ。読んだことないけど。
さうなのか、日誌なのか。なんだかおくゆかしいぢやあないか、ソロー(違。

といふわけで、ずつと気になつてはゐたが忘れてもゐて、ある日翻訳本が出てゐるよ、と聞いて、でも大部でお値段もはるときてゐたので、指をくはへて見送つてゐたのだつた。

昨日、本屋に行く機会があつたので、あらためてその日記を見てきた。
うーん、ほしい。
少なくとも読んでみたい。
なんとかならないだらうか。
部屋を片付けて、予算を組むしかないか。
それができたら苦労はしないんだがなあ。

いま、記録といふものがひどく軽視されてゐる。
ゆゑに、最低でも個人的に記録できるものはなんでも記録しておきたい。
たとへば新聞の記事は気になるものは残してゐる。
公の記録、信頼のおける記録とはいへないかもしれない。
しかし、記録がどんどんなくなつていく、そもそも記録することさへしない世の中だ。
自分で必要だと思ふ、のちになんらかの証拠になるだらう記録は残していく。
それが個人にできる最低限の抵抗だと思ふのだ。

日誌はさらに信頼のおけない記録だ。
でも残す。
だつてこの世が記録を軽視してゐるのだもの。
残さずにどうする。

そんなわけで、そのうちソローの日記を買つてゐるかもしれない。
片付けもしないし予算も組まないだらうがな。

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