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Wednesday, 23 September 2020

まぼろしのからっぽペン

どの文房具店にもない。
さう、呉竹のからっぽペンのことだ。
東京にはさすがに行けないけれど、最寄駅付近の文房具店を新旧あちこち回つてみたが、ない。
なかには老舗の品揃へのいい店も二店ほどあるにも関はらず、だ。

からっぽペンとはもしかしたらネット上にしか存在しないまぼろしの筆記用具なのかも。
さう思ひかけてゐたところ、Twitterで「なかなか実店舗には出回らないのだ」と教へてもらつた。
ありがたいことである。

そこであきらめればよかつたのだが、ネット上には存在するので買つてしまつた。
そして、インキを買つたまま、たまにガラスペンにつけて使ふくらゐになつてしまつてゐる秘色と水沙蓮とを入れてみた。

ほそふで芯はとても書きやすい。書いていくとますます書きやすくなる気がする。適度に摩擦といふか抵抗がある感じだ。
ただインキが若干薄い気がする。
もともとそんなに濃い色のインキではないのだが、ガラスペンで書いた印象からだともうちよつと濃く出てもいいのではないかといふ気がする。
純正のインキぢやないから仕方がないのかな。
からっぽペンの注意書きにそんなことが書いてある。
蛍光ペンがあまり好きではないのは色がどぎついからだ。
さういふ自分には向いてゐるかもしれない、と手帳に書き込んだ文字に下線を引いてみて思つた。

純正インキでは混色をして自分の好きな色を作り、それを芯に染み込ませて使ふことができるのださうな。
それも楽しさうだなと思ひつつ、なぜか心にゆとりがない。
色を混ぜて好みの色を作る余裕がない。
混色つて案外むつかしいんだよね。
さう思ふのは小学校のときの図画工作の印象か。
不透明水彩絵の具を混ぜていくと、ある時点で色が濁る。
三色までだつけか、大丈夫なのは。

また、さまざまな色に染めた羊毛を混ぜて別の色の毛を作る場合もいろいろむつかしかつた。
絵の具だとこの色とこの色とを混ぜればあの色になるはずなのにならない、とか。
青つぽい色を作りたくても、ほんのわづかだけ赤い色を混ぜないと思つた色にならない、とかね。
この時は羊毛の混色にはまつたのだが、その後ぱたりとやめてしまつてゐる。

インキの混色にもさうしたむつかしさがあるだらうことは容易に知れる。
インキ、なあ。
「富嶽三十六景」の「甲州三蔦越」みたやうな青がほしいと思ふことはある。
北斎をイメージしたインキはあるけれど、この色はないと思ふんだよなあ。
あと、たまに「あ、この色のインキがほしい」と思ふことがあるけれど、すぐ忘れてしまふ。
だいたい変はつた色のインキといふのは使ひづらい。
結局ブルーブラックやロイヤルブルーに近いやうな色ばかり使つてしまふことになる。
その反動で手帳には普段使はないやうな色のインキを使つてしまつたりはすることもあるけれども。

からっぽペンに入れた秘色と水沙蓮とは、下線や傍線を引くのに使つたりするやうかな。
手帳への追記などにもいいかもしれない。
インキ自体は引き続きガラスペンでも使ふやうだらう。

いづれにせよ、新しい文房具は楽しい。

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