少女まんがと銀英伝
脳内に倉多江美の絵で『銀河英雄伝説(以下、銀英伝)』が進行してゐる。
銀英伝といへばどちらかといふとこつてり系の物語だと思ふ。乱暴承知でさう思ふ。
だつて出てくる人出てくる人みんな劇的だもの。
セリフもなんだか凝りまくつてゐるし。
加藤直之とか道原かつみとか藤崎竜とか小林智美(その昔、今はなき『SFアドベンチャー』の増刊号の銀英伝特集に小林智美の描く帝国の人々の絵が掲載されてゐた)とか、いづれもとつてもあふと思ふ。
だといふのになぜか倉多江美なのだつた。
倉多江美といへば橋本治が『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』で水分が足りないと評した絵柄作風のまんが家だ。
『コミックトム』でフランス革命のころのまんがを描いてゐたけれど、やはり全体的になんとなく水分が足りない。それでゐてマリー・アントワネットやナポレオンはちやんと豪奢だつたりなまぐさかつたりするのがおもしろかつたのだけれども、それはまた別の話。
現在銀英伝を読み直してゐて、出てくる人出てくる人みんないろいろ抱へてゐるし、どろつとした部分を内に秘めてゐたりするのだけれども、倉多江美の絵で想像するヤン・ウェンリーは「もしかしたらヤンつてほんとはこんな人物だつたのかも」と思ふし、オーベルシュタインに至つてはこれしかないのではと思ふやうな出で立ちだ。
アンネローゼとラインハルトはもちろんきらきらしてるしね。
なにせ自分の脳内にしかないのでお見せできないのが残念でならないが、水分の足りない人々の銀英伝は、これはこれでとてもおもしろい気がする。
さういへばロイエンタールの生ひ立ちを読んでゐて思ひ出したまんががある。
大和和紀の『KILLA』だ。
確か『はいからさんが通る』の次の連載だつたのではないかと思ふ。
『はいからさんが通る』とはうつてかはつてギャグ顔ギャグ絵のひとつも出てこない、とてもシリアスなまんがだつた。
主人公の名前がキラ・クイーンといふのがいま思へば笑ふところだつたのかもしれない。
キラは複雑な生ひ立ちで、友人といつて目の不自由なチェスマスターであるアレク・フリードキンしかゐない。
アレクが目の見えないわけは母親にある。
アレクは実は不義の子だつた。
生まれてきた我が子の目が密通相手のそれにそつくりで、錯乱した母親が赤子の目を針でついてしまふ。
アレクはそのときの空の色を覚えてゐて、あれは母親の目の色だつたのではないか、と述懐する。
まんがについていふと、キラは俳優として名を成したあと自動車産業の世界でのしあがつていくのだが、唯一の聖域であるアレクに手が及び……みたやうな話になる。
さういへばこのまんがにも「聖域があるのは危険」みたやうな話が出てくるな。
大和和紀の銀英伝……大河ドラマつぼい。
さう考へるとおもしろいな。
一条ゆかりの銀英伝とか。
森川久美の銀英伝とか。
坂田靖子の銀英伝とか。
まんが化作品もアニメ化作品も複数あるから想像できることだらう。
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