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Friday, 03 July 2020

映画の中の音楽とその使はれ方

先日、T・ジョイ横浜で「ベイビー・ドライバー」を見た。
T・ジョイ横浜は、横浜駅直結のビルにできた映画館だ。NEWoManの中にある。
ここでゲキ×シネの「けむりの軍団」の先行上映をすると聞いて、予告篇のひとつも見られないかと行つてみたのだつた。
「ベイビー・ドライバー」は以前見たことがある。
ほんとはなにか新しい映画または見たことのない映画を見たいところだつたけれども、これといつてなかつたので「ベイビー・ドライバー」になつた。

そんなに好きな映画なのか、と問はれると、「うん」とは云ひ難い。
でも、もう一度、できれば応援上映のときに見てみたいなあと思つてゐた。
「Brighton Rock」とか、一緒に歌つてみたいぢやん。
あるいは「Baby Driver」とかさ。

公開当時この映画の噂はTwitterのTLで見てゐて、「え、そんな映画なのに「Baby Driver」なの? サイモン&ガーファンクルなの?」と思つた。
それで見に行つたら、やつぱりS&Gだつたわけだ。
S&Gには好きな曲はいくつもあるけれど、「Baby Driver」は一番脳内ループしやすい曲だ。
気がつくと歌つてゐる。
しかも、劇中「Brighton Rock」がすばらしい使はれかたをしてゐる。
今回見て、「ああ、これはいい使ひかただな」とあらためて思つた。

自分が好きな曲がドラマや映画に使はれるのつて、なにかとむつかしい。
おなじクイーンでいふと、去年上演された野田秀樹の「Q」だ。
劇中で「オペラ座の夜」に収録されてゐる曲をすべて使ふといふことだつた。
当時Twitterで検索をかけたところ、この件でだいぶおかんむりのクイーン・ファンがゐた。
曲の使ひ方がひどすぎる、といふのだ。
曲がぶつ切りすぎる、とか。
これはまあ、仕方のないことかと思ふ。
全部かけてゐたらそれだけで45分ほどかかつてしまふし。
映画「ボヘミアン・ラプソディ」だつて編集せずに流した曲はほとんどないはずだ。編集がうまかつたといふことはあるけれども。
或は、歌詞の意味などなにも考へずに雰囲気だけで使つてゐる、とか。

実際に観に行つて思つたのは、別段「オペラ座の夜」の全曲を使ふ必要はなかつのたにな、といふことだ。
「Love of My Life」だけでよかつたのではあるまいか。
あとはせいぜい「Bohemian Rhapsody」くらゐで。
さう云ひながら「Lazing on a Sunday Afternoon」の使ひ方にはちよつと背筋がゾッとしたことも確かだけれども。「There he goes again」の部分ね。

一方、「ベイビー・ドライバー」の「Brighton Rock」の使ひ方はどうだらう。
以下は映画の核心に触れる部分があるので、ネタバレを厭ふ向きにはお気をつけ願ひたい。

まづはかんたんに映画の内容を説明しやう。
主人公は耳に障害を負つた孤児の青年、通称ベイビーだ。
こどものころ、両親と車に乗つてゐるときに交通事故にあつて、それ以来耳鳴りがやまない。
両親はこの事故で命を落とした。
耳鳴りを消すためにiPod等で四六時中音楽を聞いてゐる。
運転の腕はピカイチで、強盗を指揮する男の元で働いてゐる。
といふのも、大量の麻薬を乗せた男の高級車を盗み、車を麻薬ごとダメにしてしまつたことがあるからだ。
その負債を返すために男の悪事に加担してゐる。
強盗はベイビー以外は毎回メンバーを入れ替へて行ふ。

あるとき、メンバーのひとりバディがベイビーに何を聞いてゐるのかと問ふ。
「Brighton Rock」だと知ると、バディは「あのすごいギターソロのある曲だろ?」などと云ひ、自分にも聞かせてほしいとベイビーのヘッドホンの片方を借りる。
「何度も聞いたよ、「Sheer Heart Attack」」だとか「兄貴が練習してゐた」などと語る口調もどこか熱い。
さうさう、好きな曲を語る時つてさうなるよね。
それも、おそらくは普段は聞いてゐないけれども、若い頃幼い頃好きで何度も聞いたやうな曲について語る時はさ。
多分、バディは「Sheer Heart Attack」リリース時にはまだ幼かつただらう。
だから「兄貴が」といふセリフが出てくる。
年の離れた兄貴だつたに違ひない。
セリフからさうしたこともわかる。

このメンバーでの強盗は失敗に終はる。
それによつて恋人を失つたバディは、ベイビーを仇とつけねらふ。
ここで「Brighton Rock」が流れるんだなあ。
車の騒音や銃声でかき消される部分もあるし、編集によるカットもある。
だが、この場面の「Brighton Rock」の使ひ方はすばらしい。
ベイビーとバディとがともに聞いた曲であることもひとつ。
それまで比較的理屈の通用するタイプだつたバディが狂気を見せる、そのやうすと曲の狂気とが相乗効果を見せる。
さう、この場面で流れる「Brighton Rock」は狂気だ。
#「The Dark Side of the Moon」ぢやないよ(笑)。
狂気の「Brighton Rock」。
いいなあ。
歌詞も意味深といへばさう。
ずつと正体を隠してきた人間を歌つた歌だもの。

そんなわけで、見に行つてすつかり満足して帰つてきたのだつた。
さういや予告篇で「地獄の黙示録」を見た。
この映画も「ヴァルキューレの騎行」の使ひ方がすごいよね。
あの曲を聞くとヘリコプタが脳裡に浮かぶもの。

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