吊革手すりにおつかまりください
右の薬指が腱鞘炎を起こして二ヶ月ほど。
よくならない。
四月に入つてすこしよくなつたかと思つたが、それもつかの間、案外仕事が多くて悪化してしまつた。
職場の人に腱鞘炎であることを云つてゐなかつたのもいけないのかもしれないが。
それにしたつて、といふ仕事でもあつたのでなあ。
右手の薬指に違和感を覚えたのは二月の半ばごろだつたらうか。
そのころは、まだペンを持つて字を書いてもどうといふこともなかつたし、箸も持ててゐた。
困るのははさみを使ふときと、電車で吊革などにつかまる場合だ。
このご時世電車の吊革につかまるなんて、といふ人も多いかもしれない。
なにしろ新型コロナウィルスはプラスチックのすべすべしたところでは三日は生存するのだといふ。
だが、吊革を持たずに立ち通しでゐられるほど体幹が強くない。
それに、吊革や手すりにつかまらずに電車に乗つてゐてひどい目にあつたことやひどい目にあはされた人も見てゐる。
自分の被害は、座席に座つてゐたときに前に立つてゐる人が倒れかかつてきたことだ。
スマートフォンを両手で使つてゐて、吊革にも手すりにもつかまらずにゐて、電車がひどく揺れたのに耐へきれず倒れ込んできたのだつた。
幸ひ、お互ひになにもなかつたからいいやうなものの、ちよつと間違へたら大惨事だ。
おなじことが、隣に座つてゐる人に起きたこともある。
隣に座つてゐる人の前に立つてゐた人が、やはりスマートフォンを両手で使つてゐて吊革につかまつてゐなかつた。
ポイント通過のときにひどく揺れて、目の前にゐる座つてゐる人に勢ひよく倒れこんできた。
立つてゐたときもある。
隣に立つてゐる人は新聞を読んでゐて、吊革につかまつてゐなかつた。
すると、突然電車が大きく揺れて、その人は背後に立つてゐた人の背中に肘から倒れこんで行つた。
背後にゐた人はひどく痛がり(そらさうだ)、倒れ込んできた人に連絡先を云ふやうきつく求めてゐた。
医者にかかるやうなことになつたら慰謝料をもとめやうといふことだ。
斯様に、電車に乗つてゐるときにはなにかにつかまる必要がある。
つかまつてたつてたまらぬ揺れもある。
体幹に自信のある方ならかまはないが、さうでないならつかまるべきだ。
新型コロナウィルス? そんなものは手を洗つてアルコールで消毒すればいい話だ。
潔癖性の人は仕方ないかもしれないけど、それも他人に倒れかからない限り、だらう。
揺れる電車に乗つてゐると吊革にはつかまらざるを得ない。
そして、やつがれは左手でつかまつてゐると電車の揺れに耐へられない。
しかも、つかまるときといふのは薬指と小指とに力がかかる。
よくならないままここまできてしまつた。
電車に乗らない分、楽になつてると思ふんだけどな。
そんなわけで、あまり薬指に負担のかからないタティングばかりしてゐる、といふ話は明日したい。
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