眠れるペンを起こすの儀
万年筆にインキを補充する。
今日は9本。
あらかたは日々いたづら書きなどに使つてゐるパイロットのカクノだが、今回はいままで眠らせてゐたペンにもインクを入れてみた。
ペンを眠らせるときにはきれいに洗ふ。
きれいに洗ふとなんだかもつたいなくてインキを入れる気にならない。
それで長いこと放置したままになつてしまふ。
使ふペンはほかにいくらもあるのでそれでもいいのだが、時折罪悪感に苛まれる。
我が家に来たのが間違ひだつたのではないか。
よそのお大尽のもとに行つてゐた方が幸せだつたのではないか。
君一本と思ひ定めた人に日々手にしてもらつた方がよい筆生が送れただらう。
ま、そんな、考へても仕方のないやうなことを考へてしまふ。
さうした休眠ペンにインキを入れるときは、「今度はあれも書かうこれも書かう」と思つてゐる。
たとへば以前ここにも書いたcommonplace bookね。
辞書を引くと「備忘録」といふ訳語が出てゐるが、やつがれは「おことば帖」と読んでゐる。
見聞きして気になつたことばを書き留めておくノートだ。
普段はRollbahnでBullet Journalをしてるもんだから極細や細字ばかり使つてしまふ。
おことば帖はバンクペーパーの無地を使つてゐるので、好きな太さの字が書ける。
せつせとおことば帖を充実させやう。
そんなことを心に誓つてインキを入れた。
ともあれ、今日はひさしぶりにインキを入れたペンと戯れることにしやう。
さういふときに書くことは乏しい記憶の中にある和歌とか漢詩とか必殺シリーズオープニングのナレーションが多い。
必殺シリーズのオープニングつて、「はらせぬ怨みをはらし許せぬ人でなしを消す」とか「黒船このかた泣きの涙に捨て處なく」とか「いちかけにかけさんかけて」とかね。
気分のきりきりしたときに太軸太字のペンで思ひのままに書くとなんとなくすつきりするのだつた。
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