ありふれた備忘録ではあるけれど
ここのところ、また commonplace book に心惹かれてゐる。
commonplace book の日本誤訳は「備忘録」ださうな。
これに違和感がある、とは以前も書いた。
commonplace を辞書で引くと「ありふれた」とか「平凡な」とかといふ意味が出てくる。
「ありふれた本」?
あまりありがたみがない。
名前はどうあれ、commonplace book はなかなかいい、といふ話もここに何度か書いた。
commonplace book には、気になることばを書きとめてゐる。
本で読んだものはもちろん、映画やTVで見聞きしたことや、ブログやTwitterなどで見かけたことばも書き留める。
commonplace book のいいところは、一種の日誌・日記として使へるといふことだ。
日付をきちんと記すことで、「あのころ自分はこんな本を読んでゐたのかー」だとか「こんなこと考へてたんだなー」といふことがよくわかる。
普通の日誌・日記よりもわかりやすいかもしれない。
系統立てて読書をしてゐる人ならもつとさうだらう。
また、さまざまなソースから集めてきたことばをつらつら眺めるだけで通常だつたらつながらないはずのことばや考へがふしぎとつながつたりもする。
たまたまやつがれは、かういふ「全然違ふもの同士が出会つたことで生まれる事柄」に目がないもので commonplace book に入れあげてゐるのかもしれないが、自分が楽しいからそれでいいのだ。
現在は、美篶堂のB6ノートを commonplace book にしてゐる。ノートカヴァーつきのノートだ。
消費税が8%になる直前、日本橋丸善で開催されてゐた万年筆祭で注文したものだ。
受け渡しが四月になるから消費税があがつてますけどいいですか、と確認されたから間違ひない。
このときは特別にバンクペーパーを選べたので、それにした。
受け取つて、長いことそのままにしてゐた。
なにを書いていいかわからなかつたからだ。
普段の美篶堂にバンクペーパーは選択肢にない。
使つてしまつたらこれで最後だ。
さう思ふと使へなくてなー。
そんなわけでカキモリに行つたときもノートを作れなかつた。
作つたところで使へないからだ。
世界でたつた一つのノートだよ。
使つたらそれで最後。
そんなものを使へるだらうか。
美篶堂のノートが使へるやうになつたのは、なにも自分でかいたものをかきつらねなくてもいいといふことに気がついたからだ。
他人のことばを書きつらねればいいではないか。
かくして、読んだ本や見た映画・TV番組その他から気に入つたことばを書き写してゐる。
もつたいなくて使へないノートを抱へこんでゐる人にも commonplace book は最適だ。
すてきなノートを開くと、さまざまな人のさまざまなことばが並んでゐる。
いいんぢやあるまいか。
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