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Wednesday, 05 February 2020

歌舞伎の新作どうなるの

昨今、歌舞伎では「ONE PIECE」や「NARUTO」、「風の谷のナウシカ」などまんがやアニメで有名な作品をとりあげて舞台にあげてゐる。
これまでの歌舞伎の流れに沿つたやり方だ。
誰もが知つてゐるものを芝居に仕立てる。
古典のやり方となにも変はるところがない。

浄瑠璃・歌舞伎は、誰もが知つてゐることから作り上げた話を上演することが多かつた。

際物なんてのはつひ最近起こつた事件を題材にしたものだからもちろん誰でも知つてゐるし、時代物の源平合戦や戦国時代に関はる人々とその逸話は、浄瑠璃や歌舞伎を見に来る人なら誰でも知つてゐる、さうしたものが多い。
まつたく元ネタのない芝居といふものもあつたらうが、いまちよつとぱつとは思ひ出せない。

いまの世の中、誰もが知つてゐる話といふのはあまりない。
以前だつたら印籠を取り出す所作をして「控へおらう!」と呼ばはれば「水戸黄門だな」とわかつたし、「殿中でござる殿中でござる」は忠臣蔵といふのは説明する必要のないものだつた。
子どもが「殿中つてなに?」と訊けば親が忠臣蔵を教へることができた。

「ONE PIECE」も「NARUTO」も「風の谷のナウシカ」も海外でも好評を博してゐる。
大道具その他舞台機構等をどうするかを考へる必要はあるだらうが、海外上演も視野に入れた選択だつたのだらうと思つてゐる。

いまはまだ初演からそれほど時間がたつてはゐないけれど、この先再演をくり返すことで内容もどんどん練られていくだらう。

ただ、その先にはこれまでの流れはない。

近松門左衛門が「碁盤太平記」をものし、それが「仮名手本忠臣蔵」につながり、やがてそこから派生して「東海道四谷怪談」が誕生する、といふやうな流れは、いまは期待できない。

「ONE PIECE」や「NARUTO」、「風の谷のナウシカ」が再演をくり返して大人気となつたら、江戸時代の流れでいふと、この先待つてゐるのは悪のルフイやナウシカの芝居やこの三つの話をなひまぜにした、あるいはほかの作品となひまぜにしたやうな芝居だ。

しかし、いまはさうはならない。
著作権があるからだ。

宮崎駿やジブリは悪のナウシカなんて絶対許可しないだらうし、そもそもナウシカから派生した話を作ることも許さないだらう。
集英社がうんといへば「ONE PIECE」と「NARUTO」とのコラボレーションはあるかもしれないが、江戸の芝居にあるやうな、そこからとんでもない内容の芝居を作るのはむつかしい。
「隅田川」から「桜姫東文章」や法界坊が生まれたやうな、そんな離れ業はもう不可能なのだ。

さうすると、新作を作るには今後も人気のあるもの世に知られたものを探してきて芝居にするしかない。

宝塚歌劇団は新作と再演をくり返してとても魅力的な劇団になつてゐる。これを手本とするやうなのではあるまいか。

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