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Thursday, 19 December 2019

今年聞いた落語 2019

今年の落語はあと柳亭市馬の「お歌の会」を残すのみとなつた。

今年はめづらしく九月を除き毎月落語を聞きに行つてゐる。
いろいろおもしろいものを聞いたうち、強く印象に残つたのは、
1. 4月横浜にぎわい座 落語教育委員会 昼の部の三遊亭兼好の「片棒」
2. 3月鈴本余一会 柳家さん喬一門会 夜間部の柳家喬太郎の「ハワイの雪」
3. 8月大手町落語の三遊亭白鳥の「豆腐屋ジョニー」
といつたところか。

噺家で印象に残つたのは柳家小太郎。
あと柳家さん助つてちよつとフラがあるよね。
聞くものがかたよつてゐるので、そんなところだ。

4月の落語教育委員会は、にぎはい座の二階の下手袖から見た。
あまりいい席ではないものの、ゆゑに兼好の「片棒」が印象に残つたので、禍福はあざなへる縄の如し、とはこのことか。

兼好の持ち味は「明るくにぎやかでブラック」だと思つてゐる。
「片棒」はそんな兼好にぴつたりの噺だと思ひながら聞いてゐたのだが、ふと見るとあれだけ「てんつくてんつく」「ぴーひやらぴーひやら」やつてゐるのに座布団の上の膝が微動だにしない。
二階からだからさう見えたというふこともあるのかもしれないが、あれはちよつとすごかつた。

10月の大手町落語で「ラグビーをやつてゐて」といふ話をしてゐたので、さういふのも影響してゐるのかな。このときの「大安売り」もよかつた。

三遊亭兼好ははじめて聞いたときから気にはなつてゐて、「でも独演会とか行つて、あのテンションで三題ももつか知らん」といふのが気にかかつてゐたのだが、来年はチケットが取れるやうなら一度は独演会に行つてみやうと思つてゐる。

「ハワイの雪」ははじめて聞いた。
思ひ返せば辻褄の合はないところがあるやうに思ふのだが、聞いてゐるときはまつたく気にならなかつた。
噺といふか語りの芸といふのはさういふものなのかもしれない。
芝居にもさういふところがある。
聞いたあと、そんなことをあれこれ考へる、そんな噺だつた。

「豆腐屋ジョニー」については聞いてきた直後にもちらつと書いた。 かういふ噺に弱い。
実在する店・三平ストアを舞台に、「ゴッドファーザー」や「ウェストサイド物語(多分ね)」、「柳生一族の陰謀」等々をなひまぜにした噺。
最高ぢやんね。

なひまぜといふのはもつぱら歌舞伎芝居のものといふ印象があるが、新作歌舞伎にはまつたくさういふものがない。
思ふに、「みんなが知つてゐるもの」がなくなつてしまつたからだ。
世の中の人は「忠臣蔵」を知らない。
源平の合戦についても知らない。
古いことばかりではない。
歌謡曲にしてもさうで、「国民的歌手」と呼ばれる人々を見て「え、この人たち、歌を歌つてたの?」と思ふ始末だ。
映画やTVドラマもさう。
これでは、なひまぜの芝居は作れない。

ではなぜ白鳥の「豆腐屋ジョニー」は成り立つのかといふと、それはおもしろいからですね。
おもしろいから、なひまぜの元を知らなくても楽しめる。
楽しんだ人の中には元を知りたいと思ふ人もあらう。
さうして世界がひろがつてゆく。
だから、なひまぜの世界をもつ「豆腐屋ジョニー」は成り立つ。

白鳥も高座で聞くのはこれがはじめてだつた。
「任侠流山動物園」とか、全篇聞いてみたいなー。

むつかしいか。

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