God Rest Ye Merry Gentleman
この時期「クリスマス・キャロル」を読むのは、さういふ季節だからといふこともあるけれど、スクルージのクリスマスに対する態度がうらやましいと思ふからといふこともある。
クリスマスを一緒に過ごさうと誘ふ甥にスクルージは云ふ。
「お前はお前のやり方でクリスマスを楽しむがいい。わしにはわしのやり方がある」的なことを。
また、本邦でいふところの歳末助け合ひ運動のやうな感じで寄付を募りに来た男たちにはかういふ。
「クリスマスだからといつて楽しく過ごすやうなことはしないし、なまけものを楽しませる余裕もない」といつたやうなことを。
物語冒頭のスクルージは「クリスマス? はっ、くだらん!」と思つてゐる。
いいなあ。
やつがれもさうしたい。
世の中至るところ赤や緑や金色で、なんかもうささういふのに疲れちやふんだよねえ。
それでなくても師走だのに。
「クリスマス・キャロル」といふのは、スクルージといふ意固地な老人が自身の過去をふり返り現在を知りこのままだとお先真つ暗だといふことを見せつけられて改心する、といつた話だと思つてゐる。
スクルージだつてこどものころから「クリスマス? はっ、くだらん」と思つてゐたわけぢやない。
若いころには若いころにふさはしい恋慕の情を抱いたこともある。
でも、いろいろうまくいかなくて、それで「スクルージ」といふ名前を聞いた時に人が思ひ描くやうなヤな爺さんになつてしまつた。
過去につらい経験を重ねたヤな爺さんは、周囲にも負の連鎖を押しつける。
このままいくとボブ・クラチェットとその家族はやはりヤな人間になつていくだらうし、甥とその家族だつてどうなるかわからない。
三人の幽霊に出会つてみづからの過去・現在・未来を見つめることでスクルージは改心し、負の連鎖を断ち切る。
物語はめでたしめでたしで幕を閉ぢる。
この時期にかういふ物語は実にふさはしい。
さう思ふ一方で、どうにも意固地だつたころのスクルージがうらやましくて仕方がない。
クリスマスなんてどーでもいいぢやん。
だいたい、24日が過ぎたら終はつてしまふクリスマスなんて、ほんとのクリスマスぢやないでせう。
Bah, humbug!
さうではないだらうか。
スクルージについては、みづからの最期はみぢめなものになると思つてゐなかつたといふのがちよつと驚きではある。
さうした覚悟もなくあんなにヤな爺さんをやつてゐたのか。
それとも、過去を見返し現在を知るうちに、段々考へが変はつていつたのか。
今度読み返すときはそこんとこに気をつけて読むことにしたい。
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