死人と死にかけた者しかゐない
先月末、家族の誕生日といふのでケーキを買つて帰ることにした。
いつも立ち寄る洋菓子店に行つた。
この店の周囲にはほかにもケーキなどを扱ふ洋菓子店や和菓子店、ゴディヴァやモロゾフといつた店を集めたスペースにある。
例年この時期に行くと、自分と似たやうな会社帰りの人々でそれなりににぎはつてゐるところだ。
それが、今年は違つた。
なんだか閑散としてゐる。
空気がしづんでゐる。
活気がない。
お菓子売場ですよ。
それも、おみやげに買つて帰るやうな菓子の並んだところだ。
華やかでにぎやかな雰囲気のあるところだ。
客が少ないといふことはもちろんある。
しかし、売り子の人々にも生き生きとしたやうすが感じられない。
「Nothing but the dead and dying back in my little town.」
サイモン&ガーファンクルの「My Little Town」のさはりが脳内に蘇る。
死人と死にかけた者しかゐない。
我が街には。
昨日は、帰宅途中に近所のドラッグストアに行つた。
これがまたお菓子売場とおなじやうな雰囲気で、な。
明るい店内には数多の商品がきちんと陳列されてゐる。生活必需品が多い。
夜、外から見たら誘蛾灯のやうに見えるはずだ。
なのに、このしづんだ雰囲気はどうだらう。
お菓子売場もドラッグストアも、決して死んだやうといふ雰囲気ではない。
でも生きてもゐない。
先にも書いたやうに、活気がないのだ。
どちらも売るものはうなるほどあつて、それも見た目に訴へかけてくるやうにきれいに並んでゐて、それでゐて買ふ人がゐない。
売る方も半ばあきらめてゐるのかもしれない。
いつまてこんな状態がつづくのだらう。
もうお菓子売場の華やぎやドラッグストアの賑はひはもどつてこないのだらうか。
もどつてこないのかもしれないな。
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