貧乏とバター
去年、バターをはじめて買つた。
それまでは「あたしがバターつて云つたらマーガリンでせう」状態だつた。
「あたしがバターつて云つたらマーガリンでせう」といふのは Twitter で見かけた話だ。
奥さんが旦那さんにバターを買つてきてくれるやう頼む。
旦那さんはすなほにバターを買つてくる。
すると奥さんが怒つて云ふのだ。
「あたしがバターつて云つたらマーガリンでせう」と。
Twitter では奥さんが悪いといふ意見が大勢だつた。
そりやさうだ。
マーガリンを買つてほしかつたのなら最初から「マーガリン」と云へばいい。
バターと云はれたらバターを買つてくるだらう。
だが、果たしてさうなのだらうか。
旦那さんは乳製品売場で迷はなかつたのだらうか。
バターの値段を見て、その価格が自分の収入にそぐつたものか否か、考へてみなかつたのだらうか。
そんなこと云はれても、「バターを買つてきて」と頼まれたのだから、バターを買つてくるのが正しい。
だから迷ふことはなかつた。
あつたとしても、どのバターを選ぶかといふことくらゐで。
それつて、「こどもの遣ひぢやあるまいし」つて話なんぢやないの?
やつがれが「あたしがバターつて云つたらマーガリンでせう」なのは、もちろん収入がバターと見合はないからだ。
マーガリンの、それもできるだけ安くてそれでも可能なかぎりおいしいと思ふものを買ふ。
ずつとさうしてきたのだが、去年のいまごろ魔が差した。
カルピスバターを購入した。
廉価なものばかりの行きつけのスーパーマーケットに、なぜかおいてあつたからだ。
ためしてみたらこれが美味い。
マーガリンに比べると、バターナイフを使つてもとりづらいし、トーストなどには塗りづらい。
そこは工夫する必要があるけれど、それを補つてあまりあるおいしさだ。
ありがたいもので、Web検索をかけるとバターの保存法方なども出てくる。
最初に適切なサイズに切りわけて冷凍庫に入れるといいといふ。
あとは必要なだけ取り出すと、バターの酸化を避けつつ使ふことができるのらしい。
そんなわけで、かなり長いあひだカルピスバターを使つてゐた。
使ひきつたので、マーガリンを買つてきた。
バターナイフで即取れて、トーストにも塗りやすい。
気がつくとあつといふ間に減つてゐる。
どうしたことだらう。
どうも、バターにくらべて風味が落ちるので、つひ使ひ過ぎてしまふやうなのだ。
それに、バターナイフなどで取りやすいといふ点もある。
これつて、どうなんだらうな。
店頭価格はバターの方が高いけれど、使つてみたらマーガリンの方が高くつくのぢやあるまいか。
きちんと比べてみないとわからないけれど、そんな気がする。
これも最近 Twitter で見かけた話だ。
ブーツがほしい。
でもいいブーツは高くて買へない。
仕方なく安物のブーツを買ふ。
しばらくはあたたかいし、水たまりの水も気にならない。
だが、安物は安物だ。
そのうち穴が空き、履いてはゐても寒いし水も浸入してくる。
いいブーツは一生履ける。
安物を履きつぶしてはまた買ふといふことをくり返した方が高くつく。
貧乏はつらいな。
Comments