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Wednesday, 06 November 2019

ラグビー・カミングアウト・普及

ちかごろ「実はラグビーやつてたんですよ」といふ話をよく聞く。

これまで云はなかつた理由はなにか。
「ラグビーやつてたんですよ」と云つても、その場がもりあがつたりしないからか。
たぶん、さうだらう。
ラグビーといふ競技は知られてゐて、しかし、何人制でどういふルールの競技なのかといふことは、これまであまり知られてこなかつたんだと思ふ。

なにしろ、「こどもがラグビーはじめたの」といふ友人に「ラグビーかー。わかんないなー。後ろにしかパスしちやいけないとか、新日鐵釜石とか松尾雄治とか平尾誠二くらゐしか」と答へたら、「よく知つてるね」と云はれたくらゐだ。
スポーツニュースを見てゐれば耳に入つてくる名前を二、三云つただけで「よく知つてゐる」と云はれてしまふ。
さういふ状態だつたのだらう。

それがワールドカップのおかげでそしてそのワールドカップで日本代表が活躍したおかげで、ラグビーのことが広く知れ渡るやうになつた。
そこで、無意識の縁から「さうだ、自分はかつてラグビーをやつてゐたぢやあないか」といふ記憶が呼び覚まされて、「実はラグビーやつてたんですよ」といふカミング・アウトに結びつく。

あるいは、云ひたくても云へない、だつて「ラグビー? ふーん」で会話が終はつてしまふもの、とあきらめてゐた人が、天下晴れて「実はラグビーやつてたんですよ」と云へるやうになつたのか。
これもありうるな。

ところで「こどもがラグビーはじめたの」のこの「こども」は女の子だ。
最近はどうなの、と訊いたら、女子ラグビーはオリンピックへの出場を目指してゐて、それに適した子でないとつづけられないやうな状態なのだといふ。
それに適した、といふのは、ラグビーがうまくてやる気に燃えてゐる、といふことだ。
趣味でとか好きだからとかくらゐの気持ちではつづけられなくなつてしまつた、といふのである。

日本で野球がさかんでいい選手も多いのはなぜか。
裾野が広いからぢやあるまいか。
囲碁だつたか将棋だつたかちよつと忘れてしまつたが、素人には到底わからぬやうなすごい手を打ち指す名人が生まれるのは、囲碁や将棋を楽しむ無数の人々がゐるからだ、といふ。
へぼ碁を打ちへぼ将棋を指す無名の数多の人々がゐる、さういふ裾野の広さが名人を生む土壌になつてゐる。
さういふ話だつた。

それが本当なら、女子ラグビーの未来は決して明るくない。

せつかく注目が集まつてゐるといふのに、残念なことだ。

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