2色カラー原画を見る
先月末、大英博物館のまんが展に行つてきた。
さまざまな原画が展示されてゐる中に、数は少ないながら二色カラー原稿もあつた。
気がついた範囲では三種類。
さいとうたかをの「無用ノ介」、高橋陽一の「キャプテン翼」、そして竹宮恵子の原画だ。
二色カラーとは文字通り二色しか色を使つてゐないカラー原稿または印刷のことを云つてゐる。
まんがだと主に黒と朱色とを用ゐるといふ。
黄色と茶色の場合もあると聞く。
二色(プラス白)を混ぜあはせてさまざまな色を作つて原稿を彩る。
フルカラーでいきたいのはやまやまだが、費用その他のことを考へての上の二色カラーであつたらう。
「無用ノ介」の二色カラーは1969年と書いてあつたやうに思ふから、連載途中のものだらう。
少年誌の二色カラーといふのはよくいへばはつきりくつきり、悪くいへば大ざつぱなところがあるやうに思ふ。
少女誌と比べてしまふからかもしれないけれどね。
でも「無用ノ介」の二色カラーは思つてゐたよりもずつと多彩で、繊細な色遣ひのところもあつた。
印刷すると印象が変はるのかもしれないな。
「キャプテン翼」は絵柄からいつて、連載開始直後の二色カラーだ。もしかすると連載初回かな。
これも、誌面で見たときよりもずつと多彩で淡い色やぼかしなどもあつて、少年誌の二色カラーを誤解してゐたかな、と思ふほどだつた。
その印象は、しかし、竹宮恵子の二色カラーを見てほぼ吹き飛んでしまふ。
竹宮恵子の二色カラー原稿のすばらしいことよ。
云はなければ、黒と朱色と二色しか使つてゐないとは一瞬思はないかもしれない。
背景は宇宙でほぼ黒なのだが、白く細かい点で星を描き、星雲なのか灰色のグラデーションの部分がある。
宇宙の背景の上にところどころ人物の絵があつて、髪の色、皮膚の色、目の色、衣装の色のうつくしいこと。
そして絵全体を眺めたときのカラフルな印象。
思はずこの絵の前で立ち止まつてしまつた。
二色カラーのまんがは、現在ではほとんどないと聞いてゐる。
カラーはフルカラーばかりだといふ。
たぶん、それがほんたうの姿なのだらう。
苦肉の策の二色カラーは廃れてしまつても仕方がないのかもしれない。
しかし、二色しか使へないといふ拘束状態から生まれるカラー原稿のすばらしさといふのもあると思ふんだよなあ。
木原敏江の二色カラーは二色なのに華やかだつたやうに記憶してゐる。
成田美名子の二色カラーはすみずみまできつちり塗られてゐて可憐。
三原順の「ロング・アゴー」の二色カラーはどこか重厚で話の内容にふさはしい感じだつた。
少年誌では新谷かおるの二色カラーがダントツでうつくしかつたなあ。
かうした原画を見てみたい。
おそらく、さいとうたかをや高橋陽一の二色カラーを見たときに思つたやうに、印刷するとつぶれてしまつたり消へてしまつたりする表現があるんだらう。
原画で見たら、さうした部分もはつきり見えるのではあるまいか。
今回のまんが展では、まんがの原画を収集して適切に保管することが急務である、といふ話も出てゐる。
二色カラー原稿展覧会なんて、開かれたりしないかなあ。
夢ばかり広がる展覧会だつた。
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