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Wednesday, 28 August 2019

大英図書館 Writing: Making Your Marks

8/21(水)、大英図書館のWriting: Making Your Marks展に行つてきた。

the British Library

今の世の中、人々の書いたもの(writing)がSNSなどに大量に流れてゐる。
人間の書いたものが、過去はどうだつたのか、現在はどうか、未来はどうなるのか、といつた展示だつた。

今回ロンドンに行くことにしたのは、この展示があつたから、といふのが大きな理由だ。
大英博物館のまんが展も見たかつたし、ブレッチリー・パークにも行きたかつたけれど、「行くか」と思ふきつかけはこのWriting展だつた。

行つて見て、昔から人はなんとかして書いたものを残さうとしてきたのだなあ、といふことに深く感慨を覚えた。

展示内容としては、最古の記録、アルファベットのできるまで、フォントの変遷、筆記用具の変遷、現在の状況、未来の予測といつた感じだと思ふ。

最古の記録としては、マヤ文明の石碑や甲骨文字などが展示されてゐた。
ところどころにタブレットコンピュータがおかれてゐて、ランダムに表示する文字がどこの国の文字かをあてるクイズを楽しむことができる。
たまたま「いろは」と出てきたので楽勝で答へられた。

なぜ人は書くやうになつたのか、といふ展示もあつた。
理由は三つあげられてゐた。
1. 数を数へるため
2. 名前をつけるため
3. 祈りなど
といつた感じだつたと思ふ。
経済活動、大事だもんねぇ。

古い石碑などの文字から、現在のアルファベットがどのやうにできたのかといふ展示もあつた。
「A」は角のある牛の顔を単純化した記号が変化したもの、といふことだつた。
甲骨文字からいまある漢字への変遷はよく目にするものの、アルファベットの変遷を詳しく見るのははじめてだ。
かういふの、おもしろいよね。
metamorphoseつて感じで。

アルファベットの変遷に関はらず、ギリシャ文字の資料の多くはエジプトで発見されたものが多いやうに思つた。
ギリシャ文字・ギリシャ語は広く使はれてゐたんだらう。

フォントの変遷では多くは讃美歌や聖書を並べて、さまざまなフォントがいつごろ生まれたのかがわかるやうな展示になつてゐた。
San Serif つて、やつぱり見やすく読みやすい文字として生まれたんだな。
あと、小文字の誕生なんてのもあつた。これはどちらかといふとアルファベットのできるまでの方に入るのではないかといふ気がするが、フォントの展示の方にあつたやうに記憶してゐる。

各所に中世やその後の本や聖書が展示されてゐるのだが、いづれを見てもマージンが大きくとられてゐる。
ほとんど本文と1:1くらゐの割合なのではないかといふくらゐ大きい。
中には書き込みのしてあるものもあつて、これがまた読みやすい字で書いてあつたりするんだなあ。
もともと書き込みすることを前提としてマージンを大きく取つてゐたのかもしれないなあ。
ちよつと中国の書に皇帝たちが署名しちやふのを思ひ出した。

筆記用具と書いたが、彫刻用具や羽根ペン、万年筆、ボールペン、鉛筆、印刷機、タイプライタ、コンピュータと、書くことに用ゐるさまざまなものが並んでゐた。

最初に現代の彫刻作品が展示されてゐた。
詩を彫つたものだといふ。
石をさまざまな技術で彫つて、おそらくはことばにあつたおもしろい効果を狙つた作品だ。
そこに彫刻に使ふ用具も展示されてゐた。
くさび型文字もこのあたりに展示されてゐたと思ふ。

羽根ペンについては、羽根ペンの作り方が展示されてゐた。
また、日本で云ふところの矢立のやうな携帯用羽根ペンもあつて、「ああ、昔からペンを持ち歩きたいといふ人がゐたんだなあ」としみじみ思つた。

日本からは螺鈿のほどこされた硯箱が展示されてゐた。二十世紀半ばのものといふことで、簡素な装飾のものだつた。

印刷では高麗の金属活字による印刷物の展示があつた。金属活字としては世界最古とのことだつた。
印刷機は、ベンジャミン・フランクリンが使つてゐたものの複製といふことで、大きなものが展示されてゐた。
その脇には、組み版を体験できるコーナーもあつた。
文字を拾つて「FAIR IS FOUL, FOUL IS FAIR」を完成されるといふもので、できあがつたら鏡に映して確認するやうになつてゐた。
つひ、喜々としてやつてしまつた。

タイプライタが登場すると、それまで男の人ばかりだつた書きものの世界に女の人が登場するやうになる。
コンピュータはApple IIが展示されてゐた。なつかしくて思はずしげしげ見てしまつた。

手で文字を書くことの一環だらうか、習字に関する展示もあつた。
カリグラフィーといふべきだらうか。
如何に美しく字を書くか、どう字を学ぶかといつた展示で、中に英語用のノートによく見られる四本線で下から二本目が赤い線のノートが展示されてゐた。
あの英語のノートの元はこれだつたのか!
文字を学ぶと就職に役立つといふ惹句もあつた。

文字の練習に役立つといふので、色の付いたピンでさまざまな図形を作成するボードゲームのやうなものが展示されてゐた。
照明が暗くてピンの色がよくわからないのでやらなかつたけれど、なぜこれが字の練習・修得に役立つのか、ちよつとわからなかつた。

過去の著名人の手書きには、モーツァルト、ナイチンゲール、ジョイス、スコット、聖武天皇と光明皇后のものなどがあつた。

モーツァルトのものは、譜面で、過去に作曲した作品の出だしだけいくつも記したものだつた。覚え書きのやうなものなのかもしれない。

ナイチンゲールのものは、従軍中の日記と科学的なメモを記したものの二点あつた。
日記はSmythson のWafer くらゐの小さなサイズで、細かい字で丁寧に記されてゐた。
科学的メモの方はもう少し大ぶりのサイズで、革だらうかカヴァもついてゐた。

ジョイスのものは、「ユリシーズ」用のメモといつたところだらうか。
A3くらゐだつたかなあ、紙を縦横に使つてゐて、赤鉛筆と青鉛筆で線を引いて内容をわけてゐたやうだ。ぱつと見ただけでも楽しい感じがする。
紙はかういふふうに自由に使つていいのだなあ。

スコットのは死の直前まで書かれてゐた日記のやうで、トラベラーズノートより少し背丈の低いやうなノートだつた。
「For God's sake look after our people.」といふのが絶筆ださうで、そのページを開いて展示されてゐた。

聖武天皇と光明皇后の展示は、互ひに詠んだ歌を書いたものだつた。名前を忘れてしまつたのが悔やまれる。

ここにはタブレットコンピュータがおいてあつて、手書き文字から性格を判断するアプリケーションが入つてゐた。
判断するポイントは四つ。
1. 大文字と小文字との大きさの違ひ
2. iの点の打ち方
3. 文章全体がまつすぐ書かれてゐるか斜めになつてゐるか
4. 書く速さ
どう書いてもいいことしか云はないやうになつてゐたやうだ。

現在のやうすの中でおもしろかつたのは、eL Seedといふ人のアラビア文字のカリグラフィーだ。
壁などに大きく書く(描く)、イラストのやうにうくつしいカリグラフィーだ。
eL Seed はTED で講演もしてゐるのらしい。一度聞いてみたいな。
壁などは、いづれ壊されてしまふものだけれど、書いたとき、書いたあとでふれあつた人々とのコミュニケーションが大切、みたやうな話をしてゐたやうにも思ふ。
また、書くことは自分にとつて「pretext」なのだとも云つてゐた。
pretextにもいろいろ意味があるからなあ。どの意味で云つてゐたのだらう。

最後に、書くことについていろんな人へのインタヴュー映像をつなぎあはせた動画が流れてゐた。

また、「五十年後、誕生日を祝ふメッセージはどうなつてゐると思ひますか」といふアンケートがあつて、五つくらゐの選択肢の中から選べるやうになつてゐた。結果も表示される。
五十年後も絵文字(emoji)やテキストで送ると答へた人が一番多いやうだつた。一番多いといつても四十パーセントにも満たない僅差ではあるものの、これが英国かと思つた。
やつがれ自身は映像などで送るを選んだ。

さらに、模造紙のような紙が用意してあつて、五百年後のwritingはどうなつてゐると思ひますか、といふやうな質問があり、そのほかに自由に思つたことを書いていいやうになつてゐた。
ばつちり日本語の鏡文字で感想を残してきた。

全体的に照明が暗いのは展示物保護のため仕方がないとして、目の色の明るい人にはこれくらゐの明かりでも十分なのだらうといふ気はした。
上にも書いたやうに要所要所にインタラクティヴな仕掛けもあつて、楽しい。
こじんまりとした展示だつたが、見所はたくさんあるし、文字なので読めると読んでしまふからあつといふ間に時間がたつてしまつた。

時間には逆行してゐるかもしれないが、もつと見やすく字を書きたいなあと思つた
もちろん、もつと書きたいな、と思つたことは云ふまでもない。

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