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Wednesday, 13 February 2019

全米やそこに捨ておけ泣かぬなら

私を泣き崩れさせた曲がひとつでもあつただらうか
といふのは、河出書房新社から2003年に出版された文藝別冊「クイーン 伝説のチャンピオン」に掲載されてゐる記事に出てくるデイヴィッド・ボウイのセリフと記憶してゐる。 前後関係がよくわからなかつたので誰が何に対して云つたのか覚えてゐないが、おそらく誰かがボウイの曲に対して云つたか、ボウイあるいは誰かがクイーンの曲に対して云つたものだと思はれる。

「泣き崩れさせる」作品ね。
さういふ作品がbestといふ考へ方はある。
映画の賞などを見てゐても、笑へて楽しい映画よりは泣けて深刻な映画が受賞するやうに思ふ。
橋本治の訃報のあとも、まぢめな批評や小説のことばかりがTwitterのTimeLineには流れてきて、(一見)ふまぢめなもの、楽しいもの、笑へるものはほとんど流れてこなかつた。
「アストロモモンガ」とか云つてゐたのはやつがれだけだつたやうな気がする。少なくともわがTLでは、ね。

「全米が泣いた」といふ慣用句がある。
万民を泣かせるやうな映画・小説・曲・whateverといふのは存在するのだらう。
人間の普遍的な感情につよく働きかけるものがある作品はさうなのだと思ふ。

その一方で、ある作品を見て笑ふか怒るか泣くかといふのは、個人の資質に関はる部分も大きい。全米は泣かなくとも「全俺」は泣く。
あるいは、ある時は泣けなくても別の時には泣ける。

前掲のムックの記事には、クイーンの曲でも「Love of My Life」とか「The Show Must Go On」とかあるけれど、といつたやうな文章があつた。
「The Show Must Go On」が泣けるのは、しかし、泣ける要因は歌の外にある。歌詞がどうとか曲調がかうだとかといふこともあるかもしれないけれど、この曲が泣けるといふときに人が口にする理由はそこにはない。
「Love of My Life」、かー。感傷的ではあるけれど、tearjerkerかといはれると、個人的にはさうは思はない。

それぢやあお前にはクイーンの曲で泣ける曲はないのか、といはれると、三曲ほどある。
いつも泣くわけではないし、中にはほかの人は泣かないかもしれないものもあるけれど、ある。

といふわけで、なにが泣けるのかといふと、「Radio Ga Ga」、それと「News of the World」の「All Dead, All Dead」と「Spread Your Wings」の並びに泣ける。

「Radio Ga Ga」が泣けるのは、単純に自分と一致するところが多いからだ。
歌ではteenageとなつてゐるけれど、自分の場合は十代のころ、深夜の友はラジオだけだつた。
喘息の発作を起こして眠れないとき、親を起こしたところで発作のおさまるでなし、ひとりで起きて薬を飲み、電気は消してラジオだけつけて、薬の効くのを待つてゐた。
親を起こさないのは、治らないからだけぢやない。
発作が長引くとだんだん相手がイライラしてくるのがわかるからだ。
さうやつて、親の顔色ばかりうかがつてゐた自分を「Radio Ga Ga」を聞いてゐると思ひ出す。
そのころはなんとも思つてゐなかつたけれど、いま思ふとなんてことだらうと思ふ。

結局、ある作品にどう心を動かされるかは個人の資質によるところが大きい。

といふわけで、ほかの二曲についてはまたの機会があれば。

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