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Thursday, 28 February 2019

「甘い生活」の悲しみ

デルタの万年筆ドルチェ・ヴィータのインキがたうとうなくなつてしまつた。

デルタ純正のブルーを入れてゐたのだが、インキ壷は空である。
デルタよ、なぜ廃業してしまつたのか……

デルタのブルーは、明るい。
ナポリの海の色、といふ話も聞くが、行つたこがないのでわからない。
黒いキャップに鮮やかなオレンジのモザイクのやうなボディ、金属部分は銀色のペンから流れ出るのに最適な色だつた。

限定発売のペンには特別に作られたインキがついてくることがある。
本邦ではセーラー、パイロット、プラチナ(五十音順)と、各社からさまざまな色のインキが発売されてゐる。
海外ブランドも然り。
ナガサワ文具センターのやうに大々的ではなくても各文房具店で独自のインキを発売してゐたりもする。

さう、世の中は万年筆用のインキであふれてゐる。
吁嗟、だといふのに、なぜデルタのブルーはないのか。
天は我を見放したか。

と、大げさに嘆いてゐるのには理由がある。
万年筆といふものは基本的に一度インキを入れたらそれ以外のインキを入れてはならないからだ。
色が変はると成分が変はる、したがつてそこで妙な化学反応が起きてペンに損害を与へる可能性がある。
そんなわけで、気に入つてゐるペンは特に一度入れたインキ以外のものは入れないことにしてゐる。
ゆゑにインキも慎重に選ぶ。
できうる限り純正。
さもなくばこの先も長く販売されるだらうやうなもの。
だからドルチェ・ヴィータには純正のブルーを入れた。

もちろん、純正のインキを入れたからといつて問題がないわけではない。
長く生産されてゐるあひだに、どう見てもある時点から成分が変はつてゐるんぢやあるまいかといふインキもないわけではない。
また、純正でも廃番になることもある。
そして、デルタのやうに会社ごと廃業することもある。

また、インキは長く保存しておくものではない。
沈殿物が生じるなどインキの状態が変はつてしまふことがあるからだ。
すなはち、買ひためておくといふことができない。
どうしたらいいんですかね。

いづれにしても、ドルチェ・ヴィータは可能な限りきれいに洗浄して別のインキを入れるしかない。
そして、その候補が見つからずにゐる。
できればデルタのブルーに近い色、と思つてゐるのだが、なかなか「これ!」といふ色が見つからない。
どうしたものかのう。

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