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Thursday, 27 December 2018

映画ボヘミアン・ラプソディ フレディが遅刻するときしないとき

映画「ボヘミアン・ラプソディ」で、フレディ・マーキュリーが時間通りに約束の場所にゐる場面が二つある。

一つは、バンドのメンバがそろつて一年後、バス停でほかの三人を待つてゐる場面。
字幕にフレディのセリフとして「遅いぞ」と出るので、三人が遅刻してきたことがわかる。

もう一つは、フレディがソロ活動を終へて、気まづく別れたバンドにまた戻りたい、といふ場面。
フレディは約束の場所であらうジム・"マイアミ"・ビーチのオフィスで三人が来るのを待つ。

この二つの場面の共通点は、バンド(QUEEN)自体の先行きが不明であることと大きな転機となるイヴェントが待つてゐるといふことだ。

メンバがそろつて一年後の場面では、ライヴなどのチケットは売れてゐるといふやうなセリフがあるから、それなりにうまくいつてゐるのだらうが、この先どうしていかうかといふ点になるとよくわからない。
ライヴに向かはうとする車が突然 middle of nowhere で故障してしまふことがその時点でのバンドの状態を暗示してゐるやうに思はれる。

そこで、フレディは提案する。
車(ジョン・ディーコンのものだが)を売つて、得た金でレコードを作らう、と。
ジョンは車を手放し、バンドはライヴやギグをひとまづ停止して、アルバム作りにいそしむ。
それがやがてEMIとの契約につながることになる。

フレディがQUEENに戻りたいといふ場面では、今後QUEENが存続していくのかどうか定かではない。
フレディ抜きでつづいていく可能性もあるが、このまま解散といふ流れも自然な気がする状態だ。
でも結局フレディは戻ることになり、バンドは各人のクレジットを廃してQUEEN名義にすることにし、LIVE AIDに参加することを決める。

フレディが遅刻してこない場面は、かうして対になつてゐる。
バンドとしての今後の行方を決め、それが大きな転機になる、といふ点で。

それぢやあ遅れてくる方はどうなのか。
映画の中でフレディが遅れてくる場面は四つある。
ジョン・リードとのはじめての会合の場面。
レイ・フォスターのオフィスを訪問する場面。
なかなか姿を現さないフレディにイライラしたブライアン・メイがフレディを待たずにみづからのアイディアを実現しやうとするスタジオでの場面。
新しいことをはじめやうとするジョンと「それつてディスコだらう」と反対するロジャー・テイラーとのスタジオでの場面。

いづれの場面も、後にQUEENとして特筆すべきヒット曲が登場/誕生する場面につながる。

ジョン・リードとの会合のあとは、TVで「Killer Queen」を披露する場面につながる。
レイ・フォスターを訪問したあとは「ボヘミアン・ラプソディ/オペラ座の夜」を作成する。
ブライアンのアイディアは「We Will Rock You」になる。
ジョンの曲「Another One Bites the Dust」は全米一位に輝くことになる。

後につづく内容は共通するものの、ではもとの場面の共通点はなんだらうとずつと考へてゐる。

「We Will Rock You」のころも若干あやしいが、「Another One Bites the Dust」のころになるとフレディのやうすはだいぶあやしい。
バンドとしての結束もしかりだ。
でも、遅刻して来ることができる、といふことは、フレディの中にまだ「ここ(QUEEN)は大丈夫だ」といふ意識があるのではないか、といふ気がする。
バンドとしての体をなしてゐる、まだ自分の居場所として機能してゐる、といふことのやうに思はれる。

それはほかのメンバもおなじで、ゆゑに新曲、それも「QUEENといつたらこの歌」といはれるやうな曲の誕生につながるのだらう。

フレディが遅刻してくる場面も、かうして共通点を持つてゐる。
さう考へると、映画を見る目がまた変はつてきて、「ま一度見たい」といふことになつてしまふのだつた。

沼とはよく云つたものだなあ。

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