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Thursday, 15 November 2018

飯田市川本喜八郎人形美術館 平家一門 2018後半

10月26、27日と飯田市川本喜八郎人形美術館に行つてきた。
今回は「平家一門」ケースについて書く。

展示室一番奥の左側のケースに「人形歴史スペクタクル 平家物語(以下、人形劇の平家物語)」から平家一門の人々が展示されてゐる。
左から順に、知盛、頼盛、宗盛、清盛、徳子、忠度、経盛、時忠が並んでゐる。
清盛が中央で、その手前に徳子がゐて、あとは左右に並んでゐるといつた形になつてゐる。

知盛は鎧姿だ。
飯田の知盛にはどことなく微笑んでゐるやうな印象がある。
髭の感じかな。
顔の表情自体は別段笑つてゐるやうには見えないのだが、髭のはねあがり具合が笑ひ顔を思ひ起こさせるのだと思ふ。
落ち着いてゐて、隣にゐる宗盛より兄貴に見える。

知盛の右ななめ前に頼盛がゐる。
美術館の解説の方は、平家は没落していく一族なので衣装にもさみしげな色を使つてゐることが多い、と説明してゐた。
頼盛も宗盛も、云はれてみれば淡い色合ひの衣装を身につけてゐる。
なぜここに頼盛、といふ気もするが、対になるのが経盛だからかな。

宗盛は知盛の右となりにゐる。
人形劇のとき主に宗盛を遣つてゐた操演の方が弁慶も主に遣つてゐたといふのがおもしろい。
弁慶と宗盛とは、かなり対極に近いんぢやあるまいか。
母太郎だけれども、父太郎の重盛と比較されたりしたこともあつたのかなあ。
なんとなくさういふ子供時代を過ごしてきたやうな表情に感じられる。

「平家の一族の衣装はさみしげな色」と先ほど書いたが、清盛は違ふ。
僧形だから浄海だらうか。
蜀錦のキンキラキンの衣装で、これがよく似合つてゐる。
衣装の華やかさに全然負けてゐない。
この年の人をつかまへてどうかとも思ふが、きかん気の強さうな表情がまたいいんだなあ。

徳子は清盛の前にゐる。
人形劇のときの徳子は個人的に「川本美人」だと思つてゐる。
以前、渋谷ヒカリエで平家一門の栄耀栄華を描いた展示のときにさう思つた。
徳子は琴を弾じてゐたやうに記憶してゐる。
うつむいた顔のちよつと大人びた感じがよかつた。
飯田の徳子はどちらかといふとこどもつぽい顔をしてゐるやうに感じる。
清盛か二位の尼と一緒にゐることが多いからだらうか。
天皇の母といふよりは、清盛の娘といふ面を表に出した展示が多いやうに思ふ。

忠度は清盛の右となりにゐる。
緑と紫とを基調にした鎧を身につけてゐる。
おなじ緑でも義仲の緑はsap greenとでもいはうか、草や木を思はせる緑だ。
忠度の緑は苔かな。義仲の緑よりもつと渋い色だ。
一口に緑といつてもいろいろあるのだなあと実感する。

経盛は忠度の右ななめ前にゐる。
ダンディ。
経盛を見るといつもさう思ふ。
衣装も、頼盛や宗盛に比べるともつと深い色で、そのせゐもあるのかもしれない。
これまでの展示では経正や敦盛と一緒のことが多く、父の悲哀のやうなものを感じることしきりだつた。
さうでもない経盛を見るのもいいな。

時忠はケースの右端にゐる。
時忠も「なぜここに時忠?」といふ気もして、左端にゐて対になつてゐるのが知盛だし、そこのところはよくわからない。
経盛同様、時忠にも渋いをぢさまめいたところがあるのだが、経盛にある甘さがない。
対照的でおもしろい。

以下、つづく。

紳々竜々と「荊州の人々」についてはこちら
「玄徳の周辺」についてはこちら
「江東の群像」前半はこちら
「江東の群像」後半はこちら
「曹操の王国」前半はこちら
「曹操の王国」後半はこちら
「源氏と木曽」についてはこちら

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