まんがの思ひ出
生まれてはじめて買つ(てもらつ)たまんがの単行本は、有吉京子の「なにクソッ天才!」である。
成績優秀な生徒ばかり集めてゐるとある高校に図抜けて成績のいい女子生徒が転校してくる。
あまりにも出来るのでもとからゐる生徒の反感を買ひ、学校の中でもとくに特待生ばかり集めた校舎へと送り出されるのだが、この特待生といふのが常軌を逸した生徒ばかりで……
といふやうな内容だ。
もうひとつ掲載されてゐたまんがは、こんな内容だ。
母子家庭で、長女・次女・長男・三女の五人家族の家に、ひどく不釣り合ひな高級車が停まる。
中から出てきたのはこれまた裕福さうな人物。
その後、母や姉が突然妹につらくあたりはじめたことを不思議に思ひつつも、長男は三女とともに家出をはかる。
実は、生活があまりにも苦しいので、母親が三女を養女にしやうと計画してゐたのだつた。
高校生か中学生とおぼしき長女と次女とはそのことを知らされてゐたが、小学生の長男と当事者でもある三女はそのことを知らなかつた。
その事実を知らされて長男は……
「なにクソッ天才!」ではカトリーヌ・ドヌーヴだとかブリジット・バルドーだとかの名前を覚えたなあ。
どういふ人物かといふのは知らないけれど、どちらも美女なのだらうといふことはわかつた。
もうひとつのつらい内容のまんがからは、遊園地には入場券がないと入れないといふことを学んだ。
なにしろこの一冊しかまんががないものだから、くりかへしくりかへし読んだのだつた。
そのわりにはあまり覚えてゐないけれどもさ。
のちに「SWAN」に出会つて、「え、あの「なにクソッ天才!」を描いた人のまんが? えー、絵が違ふ」と思つたなあ。
よくよく見比べればおなじ人物の描いたものだとわかつたのだらうけれども。
母自身もまんがが好きだつたせゐか、雑誌を買つてもらふこともあつた。
「なにクソッ天才!」のころは「週刊マーガレット」や「別冊マーガレット」を読んだ記憶がある。
毎週毎月買つてもらへたわけではない。
多分、一冊買つてもらつて、それをしばらく読んでゐたのではないかといふ気がする。
それに、実をいふと「週刊マーガレット」の記憶はあまりない。
「つる姫じゃ〜っ!」を雑誌で読んだ記憶があるので「週刊マーガレット」を買つてもらつたことがあるのだらう、といふくらゐで、ほかのまんがの記憶がないのだつた。
次回予告に怖いまんがのことが載つてゐたので、あまり読まないやうにしてゐたのかもしれない。
「別冊マーガレット」では和田慎二の「わが友フランケンシュタイン」ものを読んだ記憶がある。
ヒルダといふ口のきけない少女が村の人々によつてたかつていぢめられる話だつた。
三原順の「赤い風船のささやき」も読んだ。
「なにクソッ天才!」よりもこちらの方が後のまんがの好みに影響を受けたやうに思ふ。
小学一年生のときに、叔母から「花とゆめ」をもらつてその後しばらくは毎号買つてもらつてゐた、といふ話は以前書いたな。
そのあと「なかよし」「別冊少女コミック」「ひとみ」「Lala」と変遷する。
「別冊少女コミック」は入院したときにお見舞ひとしてもらつて、それで買ふやうになつた。吉田秋生のデヴュー作とおぼしきまんがを読んだ記憶がある。
入院してゐたときはほかにもお見舞ひとしてまんが雑誌をもらつて、中に名香知子の「緑の目の城主」シリーズ三作を掲載してゐるものがあつたなあ。どの雑誌だつたんだらう。
文月今日子のまんがも載つてゐたやうに思ふが別の雑誌だつたかもしれない。
叔母から「花とゆめ」をもらつたときは従姉と一緒だつた。
叔母から「花とゆめ」と「少女フレンド」とどちらがいいか訊かれて、従姉は「少女フレンド」、やつがれは「花とゆめ」を手にしたのだつた。
趣味がわかれてゐてよかつたな。
しかし、このとき「少女フレンド」を選んでゐたら、その後読むまんがもまた違つてゐたんだらうなあ。
従姉もその母である叔母もまんがが好きで、「はいからさんが通る」とか遊びに行つたときに読んだなあ。
従姉は(叔母は、かもしれないが)「プリンセス」を買つてゐて、「悪魔の花嫁」が怖かつたのと、「イブの息子たち」がなにがなんだかさつぱりわからなかつた記憶がある。「イブの息子たち」はそのわけのわからなさがいいんだけどさ。
「母恋千鳥」といふまんがもあつた。のちにオバタリアンと呼ばれるやうなをばさんの家に居候する少女・千鳥の物語だつた。
をばさんとその娘とからひどい扱ひを受ける千鳥だが、何作か読んでゐると千鳥にも抜けたところがあつたりして、一概に可哀想とばかりもいへないまんがだつた。
母が云ふには、以前はかうした「継子もの」のまんががあつたのださうだ。
リアルタイムで読んだのはこの「母恋千鳥」くらゐではないかなあ。
思へば、当時とまんがの趣味はあまり変はつてゐない。
だからいま読むものがあまりないといふ話もある。
健全なまんが読みの人はそのときどきにその場にあるまんがを読んで自分の中の「まんが」をアップデートしていくものなのだらう。
残念ながら、やつがれの「まんが」は「わが友フランケンシュタイン」や「赤い風船のささやき」、「だから旗ふるの」あたりで停まつてしまつてゐるやうだ。
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