物欲の秋
先週末、東京インターナショナルペンショーに行く気満々で、結局行けなかつた。
三連休にあひだに高熱を出し、その後咳と鼻水とがぬけない。
つひ一昨日くらゐまでは嗅覚が麻痺してゐたやうで、ほとんど匂ひもしない状態だつたし、あひかはらず咳込んでは周囲の人々に迷惑をかけてゐる。
そんな状態なので、泣く泣く浅草行きはとりやめたのだつた。
それでよかつたやうな気もしてゐる。
現在万年筆に対する物欲がまるでないからだ。
物欲がまるでない、とか云ひながら、七月にはhelico の sucre を買つたのだが、いまのところそれを最後に買つてゐない。
プラチナの薫風やprocyonも買つてゐない。
薫風は名前が、なー。
KとPつて音が強すぎる気がするんだよね。
しかもどちらもあとにくるのがUの音で、やはらかさに欠ける。
あとで考へたら、レ点を打つて「風かをる」とでも読めばよかつたのかもしれないと思つたが、手遅れだつた。
procyonは、出会ふ機会がなくて、そのままになつてゐる。
出会ふ機会がないといへば薫風もさうか。
procyonはもしかするとそのうち入手してゐるかもしれないけれど。
といふのは、手持ちのペンで十分に使へてゐないものがたくさんあるからだ。
もつと持つてゐるペンを活用したい。
活用、といふとちよつと違ふかな。
とにかく使ひたい。
書きたいのだ。
しかるに時間がない。
書くことにはこと欠かない。
なにも書くことがなかつたら、気に入つた文章などを書写すればいいのである。
文章でなくてもかまはない。
芝居の外題だとか名せりふだとか、名でなくても好きなせりふだとか、書きたいことはいくらでもある。
しかるに時間がない。
時間なんて探せばあるんですよ。
人はさう云ふ。
ほんたうだらうか。
家に帰る。
支度をして夕飯を食べ片づける。
風呂を沸かしながらラジオ講座を聞く。
入浴して冷ましながらラジオ講座のつづきを聞き、あとはぼんやりする。
時間が来たら寝る。
この中で変更が効くことがあるとしたら入浴後の過ごし方だが、実際のところ、ここでぼんやり過ごすからなんとか一日平穏に過ごせてゐるのであつて、なかつたら……なかつたらおそろしいことになる気がする。
それに、ぼんやりしないのだつたらさつさと寝るべきなのだ。ほんたうは布団の中でぼんやりすればいい。さうも思ふ。
とにかく睡眠時間が足りてゐない。
だから熱など出すわけで。
これは時間のない云ひ訳だらうか。
さうは思はない。
日々なににどれくらゐ時間がかかつてゐるか数ヶ月調べて、だいたい平均的なところを出してみて、削れるところがあるとしたら通勤時間と勤務時間で、それは削りたくても削れない時間なのだつた。
あとは夕飯を食べるのをやめるくらゐかな。
手持ちのペンさへ満足に使へてゐないのに、ましてや新たなペン。
いまはそんな気持ちだ。
それは、長引く不調のせゐかもしれないし、いつまでも止まらない咳のせゐかもしれない。
元気になつたあかつきには(そんな日が来るとして)、また新たなペンを求めてゐるかもしれない。
でもいまは手持ちのペンで思ふ存分書く時間がほしいな、といふのが正直なところだ。
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