八月二十三日
疲れてくると太字の万年筆で覚えてゐる漢詩を書き散らす。
そんなにたくさんはないので、すぐ書くものは尽きる。
でもまあ曹植の「吁嗟篇」でも書けば十分な長さがあるので一篇で済む。
中村吉右衛門の朗読した「漢詩紀行」のDVDを何枚か持つてゐる。
一時これを毎晩寝る前に一番組づつ聞いてゐた。
もともとこの番組を知つたのは、夜勤をしたときのことだ。
その夜は早めに仕事が終はり、一旦宿に帰ることになつた。
朝まだき、TVをつけると、NHK教育で「漢詩紀行」を放映してゐた。
播磨屋の朗読で、もうなんの詩だつたか忘れたが、なんだかとつてもしみじみした気分になつた。
映像もまたゆつたりとしたものだつた。
あれから何年か経ち、DVDが発売されてゐることを知つて、少しづつ買つてゐる。
中に「三国志の詩」といふ巻があつて、これを一番よく聞いてゐると思ふ。
さう、多分今日はさういふ日だ。
いつもなら「短歌行」とか「赤壁賦」の覚えてゐる部分だけ(すなはち好きな部分だけ)とか、有名どころの「楓橋夜泊」だとか李白、白楽天、李賀の詩を書き散らすところ、今日だけは杜甫だらう。
それも「唐詩選」には載つてゐないものを書くのだらう。
何年か前のこの日にもちらりと書いた、きつとここでいふ「英雄」に杜甫自身も入つてゐるのだらうと思ひつつ、また、みづからも日暮時に晏子の故事を口ずさみつつ。
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