暑さと湿気とあみもの
去る冬、結局のところ寒暖といふのは相対的なものだなと実感した。
ものすごく低い温度を体験したあとでは、それより高いと常なら低いと思うやうな温度でもたいして寒くないと感じるものだ、といふことだ。
この夏は暑さでそれを実感してゐる。
あまりにも暑い日々を体験したあとでは、平年並みの暑さでもさほど暑く感じない。暑くても、なんとか我慢できる。
さうやつて我慢してゐると、絶対的には気温は高いのでかへつて危険なのだが、こればかりは仕方がない。
そんなわけで、すこし涼しくなつたのであみものでもしてみるか。
と、思へばいいのだが、思はなかつた。
腱鞘炎の具合はあひかはらずで、よくなつたのやらなつてゐないのやらよくわからない。
いづれよくはなつてゐないのだらう。
よくなつてゐたら気にならないはずだからだ。
これだけ暑いと編む気も失せるしな。
編んだものといふのは織つたものより地が厚くなりがちだ。
したがつて、暑い時期には向かない。
とくに日本のやうに蒸す暑さには向かないと思ふ。
以前もここに書いたらうか。
気温が摂氏四十度を超えても、手編みのくつ下をはける、と豪語してゐる人がゐた。
おそらく、その人の住む地方は乾燥してゐるのに相違ない。
蒸した暑さに手編みのくつ下はムリだ。
同様に夏場にモヘアといふのもあり得ない。
海外のあみもの雑誌などには夏でもモヘアのレース編み作品が載つたりするが、湿気のある日本の夏にモヘアはあのけもけもした毛が非常に不快になる。
えうは、日本の夏に編んだものが向いてゐるとはとても思へないといふことだ。
ひとつあるとしたら、冷房の効き過ぎた状態に対処するための羽織ものだらうか。
綿やとくに麻の糸で編んだショールやストールは冷房除けにいいと思ふ。
問題は、冷房のきいてゐないところでもさうしたショールやストールを持ち歩かなければならないといふことだ。
さうすると、編んだものよりは小さくたためる織つたものの方が便利、といふことになる。
冬はあひかはらず寒くなるのだらう。
地球温暖化によつて極地の氷が溶けて海水の塩の濃度が下がると、これまで流れてゐた暖流が底にしづむので温暖だつた地域も冷えるといふ話を聞いた。
あみものをやめる必要はない。
夏さへ乗り切ることができれば。
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