好きな人がいない必殺シリーズ
ぼんやりと「必殺シリーズの中で一番好きな登場人物は誰だらう」と思つてとつさに思ひつかないことに衝撃を受けた。
え、ゐないのかな、もしかして。
自分のことなのに、そんなこともわかつてゐなかつたのか。
うかつである。
いや、粗忽か。
仕掛け/仕置き/仕事/whatever の場面であらはれるときに一番好きなのは、「助け人走る」の文さんだ。
スキャットのBGMが流れて、田村高廣演じる文十郎の横顔が闇にふつと浮かぶ、あの瞬間が異様に好きである。
BGMがスキャットぢやなかつたり、横顔からの登場ぢやなかつたりするときはがつかりするくらゐ好きだ。
おなじく「助け人走る」の中谷一郎演じる平さんこと平内の煙管の煙がふはりと揺れる、あの登場場面もいい。
暗闇にほの白い煙がぼうつと浮かんで、あれはいい場面だといつも思ふ。
ぢやあ登場人物として文さんや平さんが好きか、と訊かれると、うーん、それはちよつと違ふんだなあ。
いろいろ考へて、「必殺仕掛人」の山村聡の音羽屋半右衛門かなあ、といつたところか。
あとは「必殺必中仕事屋家業」の岡本信人の利助。
それと「必殺仕業人」の美川陽一郎の島忠助。
仕掛け/仕置き/仕事/whatever しないぢやん、とも思ふが、それくらゐしか思ひつかない。
一回きりのゲストキャラクタなら好きな登場人物はいくらもゐるんだがなあ。
「必殺仕掛人」の戸浦六宏演じる左内の昔の上司(とゆーか)とか。
おなじく「必殺仕掛人」の佐藤慶演じるカルト教団の頭首とか。
佐藤慶は「必殺仕置屋稼業」の方がいいか。あれは必殺シリーズ全体でも一、二を争ふやうないい登場人物だ。
「新・必殺仕置人」最終回の辰蔵もいいよねえ、佐藤慶。一緒に出てる清水紘治の諸岡さんも忘れられない。
「必殺からくり人」の岸田森演じる鳥居甲斐守もいい。
鳥居燿蔵は「必殺仕置屋稼業」では志村喬が、スペシャル番組では米倉斉加年が演じてゐて、とくに志村喬の方は如何にも明治の世まで生き残りさうなしぶとさがあつていい。
岸田森の鳥居燿蔵はなんだかすぐ死んぢやいさうなところがある。でもあの人を人とも思はぬセリフがね。
といふ感じで、いくらでも出てくる。
たぶん、必殺シリーズが好きなのは、といふか、TV時代劇が好きなのは、一話完結で毎回ゲストが楽しみ、といふところにあるんだな。
などと考へてゐるうちに、「必殺仕掛人」を見返したくなり、やはりDVD BOX的なものを手に入れやうかと算段してゐる。
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