役に立つのか反訳トレーニング
外国語習得は、自分の意見を持たない人間にはできないことなのだらう。
去年の四月からNHKラジオ講座の「高校生からはじめる「現代英語」」といふ番組を聞いてゐる。
ニュース記事を高校英語程度でわかるやう書きなほしたテキストで勉強する講座だ。
この講座の特徴は反訳トレーニングを推奨してゐることだ。
反訳トレーニングとは、テキストの英語本文を日本語で訳した文章を見て英語の文章を組み立てなほす練習である。
大変骨のあるトレーニングではあるが、つづけると必ず力がつきますよ、と講師の伊藤サムはいふ。
半信半疑のまま、この反訳トレーニングをやつてみた。
最初のうちはこの講座で扱つたテキストだけ、今年に入つてからはほかのNHKラジオ講座のテキストでも折りにふれ挑戦してみた。
去年の四月から一年とすこし、反訳トレーニングについては慣れてきたな、といふ気がしてゐる。
以前はできるやうになるのにかなり時間がかかつたし、「できるやうになつた!」と思つても一週間後にはもとにもどつてゐた。
あまりにも時間がかかるので、反訳できるやうになつたといふよりは暗記してしまつたといふ方が正しいのではないかと思ふこともしばしばだつた。
それが最近になつて、記憶したわけではなく日本語を見て「かういふ英文だらう」と反訳できるやうになつてきたといふ実感がわくやうになつた。
「高校生からはじめる「現代英語」」の日本語訳の文章は、反訳トレーニング用なのかかなりいびつな文章ではある。
ことばの並びが英文そのままだつたり、反訳を助けるやうな直訳に近いものになつてゐたりする。
また、とりあげる内容はニュースなのでさまざまではあるものの、おそらく文章を書いてゐる人はさう何人もゐないやうに見受けられるので、その人の書く英文の癖を覚えたからできるやうになつてきたのではないかといふ疑念もある。
それで別の講座でも反訳を試みるやうにした。
ものすごくよくできるやうになつたとはいへないものの、以前よりはトレーニングにかかる時間も少なくなり、過去のものも前よりはスムースにできるやうになつてきた。
少なくとも反訳トレーニングに関しては。
ぢやあ英語力がついたのか、といふと、どうもさういふ気はしない。
英語力がついたかどうか確認する術がないせゐもあるが、英語ができるやうになつたといふ実感がない。
もしかすると、反訳の力がついたわけではなく、単に記憶力がよくなつただけなのかもしれない。
「高校生からはじめる「現代英語」」にはもうひとつ英語力をつける方法として、ニュースでとりあげた話題について英語で話し合ふといふトレーニングをあげてゐる。
最近の講座ではサウジアラビアで女の人も車を運転できるやうになつたといふニュースを扱つてゐた。
何人かでディスカッションするといいし、それができない場合は一人二役でやつてもいいですよ、と講師は云ふ。
これはやつたことがない。
ニュースを聞いて、自分の意見を述べることなど長いことしたことがないからだ。
英語はおろか、日本語でさへろくなことが云へない。
まづは日本語で意見を述べられるやうにならないと、英語でなど到底云へるやうにはならないだらう。
道は遠いな。
さうすると、苦労してやつてゐる反訳トレーニングも無駄な気がしてくる。
どうしたものかなあ。
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