体力不足
体力がない。
高校生のときにはじめて定期券を手にして、移動範囲が広がつたのがうれしくて休みのたびにあちこち出かけてゐたら、あつといふ間に熱を出して寝込むことになつた。
当然学校も休んだ。
このとき母に「体力がないんだから、そんなにあちこち出歩いちやダメよ」といふやうなことを云はれた。
なるほど、自分には体力がない。
だからといつて「体力がない子」として育てられたわけではなかつた。
喘息持ちだつたから、とくに冬場の長距離走などは参加できなかつたこともあつたけれど大抵は走つてゐたし、体力がないといふ理由でなにかをしなかつたりなにかをしたりした記憶はない。
体力をつけろ、とは云はれたけれど、それは体力のある子でも云はれることだらう。
思ふに、いままで生きてきて体力があつた試しがない。
多分、人生の早いうち、こどものころのどこかで「体力がない人間なりの生き方」を身につけるべきだつたのだ。
あるいは人並みに体力をつけてゐればよかつた。
いや、若いうちに人並みに体力をつけたしても、もともとないんだから維持できたとは思へない。
やはり「体力がないなりのに生き方」を身につけねばならなかつたのだ。
自分は「普通の子」として育てられた。
普通の子がすることをするやうに、普通の人がたどるだらう道筋をたどるやうに育てられてきた。
それが、いまここに来てムリだな、と思へてならない。
もつと、自分にできることをできる範囲でやつて、それで生きていけるやうに育ててくれればよかつたのになあ。
さう思つてしまふ。
いまさらなにを云つてゐるのだ、成人したらあとは自分の責任だらう。
そのとほりかもしれない。
でもいま自分にできることをできる範囲でやらうとしたら、といふよりは、いましてゐることをやめてしまつたら、おそらく生きていかれない。
いざ生きめやも、か。
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