TVを見ながら編む
レースものを編みはじめてしまつた。
ものは「風工房のクロッシェレース」に出てゐる黒いスカーフだ。
方眼模様の本体部分と両端にぶらさがつた葉のモチーフからなるスカーフである。
これをちよつと灰色がかつた紺色で編んでゐる。
かぎ針編みは、先週ちよこつと編んでみたのが久しぶりで、なかなか進まない。
もともとこのスカーフは何目か編んだら一度目から針をはづして下の段の細編みの頭を拾ひ、さつきはづした目を引き抜くといふ動作が至るところに出てくる。
細編み五目か六目おきに針を目からはづさねばならない。
途中に引き抜きピコもあるから、しよつ中目を確認しながら引き抜く必要がある。
そりや進まないよね。
土曜の夜はTVドラマ「パディントン発4時50分」を見ながら編んだ。
TV朝日系だと思ふが、そこはかとなく「火曜サスペンス劇場」を思はせるやうな作りだつた。
なにがさう思はせたのかといふと、ひとつには音楽だ。
BGMがなんとなく「火曜サスペンス劇場」風味だつたのだ。
あと、昔見た「土曜ワイド劇場」では大金持ちの邸宅でもどことなく使用感・生活感のある絵だつたやうな記憶があるのだが、今回のドラマに出てきた邸宅にはまつたく生活臭がなかつた。それが「火曜サスペンス劇場」つぽく感じられたのだと思ふ。
「パディントン発4時50分」は、ミス・マープルものだ。
つまり、探偵役が編むといふことだ。
今回ミス・マープルにあたる役を天海祐希が演じるといふので、見る前からとても楽しみにしてゐた。
ゆりちやん、編むか知らん。
ゆりちやんが編まなくても草笛光子が出るといふし、光子さんでもかまはない。
誰か編まないかなー。
期待して二時間見たが、結局だれも編まなかつた。
西田敏行が着用してゐたセーターはどれもおもしろかつたけれど、それくらゐだ。
だれも編まないなんて、ミス・マープルの意味がないぢやん。
話によるとミス・マープルものには「くつ下の踵(turning heel とかだつたかな)を編んでゐた」といふ証言からだいたいどれくらゐ時間がかかつたかを割り出すといふエピソードがあるといふ。
なのに、誰も編まないなんて。
翌日の「鏡は横にひび割れて」は見なかつた。
TV番組をリアルタイムで見ると、存外時間をとられると「パディントン発4時50分」を見てしみじみ思つたからだ。
最近、TV番組は録画したものしか見ない。
ゆゑに、自分が見たいときに見たいだけ、しかも見たいところだけ見ることができる。
これに慣れてしまふと、一時間ならともかく二時間もTVの前にしばりつけられてしまふのが、どうにも苦痛なのである。
その苦痛をすこしでもやはらげやうとあみものをするわけだが、世の中、マルチタスクは脳によくないといふ話もあるしなあ。
ミス・マープルはやつぱり編まないとね。
「パディントン発4時50分」は、天海祐希が演じた役を草笛光子が、前田敦子の演じた役を天海祐希が演じてゐたらもうちよつと違つた形になつたのかな、といふ気もしないではない。
草笛光子のミス・マープルはいいんぢやないかと思ふんだけどねえ。
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