クリアーキャンディの思ひ出
A.S.Manhattaner's とセーラーとのコラボレーション製品のひとつであるクリアーキャンディ万年筆にインキを入れた。
セーラーのクリアーキャンディ万年筆には思ひ出がある。
昔から万年筆がほしかつた。
母のおさがりを何本かもらつたりはしたが、いづれもインキがない。
瓶入りのインキがあつたので、当時はつけペンのやうにして使つてゐた。
入学のをりに誰か万年筆をくれたりしないかなと思つてもゐた。
兄弟は叔母からもらつてゐた。
クレージュの万年筆とボールペンとのセットだつたと記憶する。
ひどくうらやましかつた。
就職もして、でも誰も万年筆を送つてくれることはなかつた。
とにかく万年筆にあこがれてゐて、そんなをりに発売されたのがセーラーのクリアーキャンディ万年筆だつた。
ほしかつたねえ。
真つ赤な軸にポイントとして白やピンクがあしらつてあるものや、逆の色味や、目にもあざやかなペンが店頭に並んでゐた。
六百円くらゐだつたらうか。
お小遣ひでは買へなかつた。
貯めれば買へる。
しかし、ほかにもほしいものはいくらもあつた。
親にねだることもなかつた。
あるいはねだつたところ、おさがりをもらつたやうにも思ふ。
結局クリアーキャンディを手にすることは一度もなかつた。
クリアーキャンディ万年筆は何年か前に復刻されて、それは買つた。
A.S.Manhattaner'sとのコラボレーション製品は、それより前に販売されたものだ。
絵柄もかはいいし、なにしろあのクリアーキャンディの末裔だ。
即購入した。
プラチナ萬年筆がプレピーを出し、パイロットがkakunoを売り、廉価な万年筆はそれなりに市民権を得てゐるやうに見受けられる。
最近店頭でクリアーキャンディをあまり見かけないのがなんとも惜しい気がしてしかたがない。
プレピーともkakunoとも違ふ魅力のあるペンなのに。
もつとも売られてゐたらつひ買つてしまふにきまつてゐるので、懐のためにはいまの状態の方がいいのかもしれない。
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