トワイライト・ウルトラ・ゾーン
「ウルトラセブン」の再放送が終はつてしまつた。
「ウルトラセブン」を見てゐてときをり感じてゐたのは、「なんだかまるで普通のドラマだな」といふことだ。
たとへば最終回に近い「あなたはだぁれ?」だ。
夜、小林昭二演じるサラリーマンがかなりきこしめした状態でタキシーに乗り、団地にある我が家に帰る。
出迎へかと思つた自分の妻も子も自分のことを知らないといふ。
近所の人も同様。
いつも挨拶してゐる交番の警官もまつたく自分のことを知らないやうだ。
困つたサラリーマンは公衆電話から電話をかけて助けを求める。
ここまでのやうすがまるで普通のドラマのやうだつた。
こども向けの特撮ドラマといふ感じがまるでない。
おそらく実際の団地でロケをしたのだらう、なにもかもとてもリアルなのだ。
小林昭二のサラリーマンもさうならその妻とおぼしき三條美紀もさう。近所の人々もだ。
演技もさうなら、衣装その他も大仰なところがまるでない。極めて自然で、当時ならさういふ服装もしてゐたらうといふやうすだつた。
さういへば「仮面ライダービルド」の浜田晃の登場場面にもさういふのがある。
銭湯とか神社の境内とか、さういふところに政界の黒幕がゐて、一見普通の人と変はらぬやうすでゐながらなにか悪事を企んでゐる。
さういふことは普通にありさうだ。すくなくともドラマの中ではあつてもをかしくない。
銭湯は若干唐突ではあつたものの、それ以外のとくに政治家の登場場面のセットが見るからに作りものなことを考へると、浜田晃の演技も含め、このまま二時間ドラマだとかゴールデンタイムに放映するドラマの一場面として用ゐてもをかしくない。
「あなたはだぁれ?」は舞台や人々のやうすをリアルにすることで恐怖感をあふらうとしたのだらう。
どこにでもあるやうな団地で、帰つてくると家族は自分のことは知らないといふ。
団地ごと宇宙人に乗つ取られてしまつたからだ。
あるいは原因は宇宙人ではないかもしれない。
たまたま自分がなにかのタイミングで異次元・異世界にすべりこんでしまつたのかも。
「ウルトラQ」から流れる「トワイライト・ゾーン」のやうな世界がそこにはある。
最近の特撮ヒーローものドラマにはない要素だ。
あるいは東映が「トワイライト・ゾーン」的なものに興味がないのかもしれない。
とくに戦隊ヒーローものは見るからに作りものといつた印象のセットが多いやうに思ふ。
現在のキュウレンジャーの宇宙船にしてもトッキュージャーの電車にしても、あるいはジュウレンジャーの人々が普段集まつてゐた場所の作りにしても、どこをとつても作りもののセットだ。
仮面ライダーもエグゼイドの病院の一室などは同様に見えたし、全般的に喫茶店やバーの作りも「こんな店ないよね」といつたやうすが見てとれる。
さう考へてみると「太陽戦隊サンバルカン」のサファリはよくできてゐたんだな。
セット自体はどこにでもありさうな喫茶店のそれだつた。
外観がうつることがあるからよけいにさう思つたのかもしれない。
作りものめいたセットが悪いといつてゐるのではない。
いつから作りもののセットがあたりまへになつたのかに興味があるのだつた。
いや、そらウルトラ警備隊の基地なんかだつてこれ以上の作りものはないよ。
「ウルトラセブン」の第一話などもよくぞ模型でここまで真に迫つた大火災を撮つたな、と思ふし。
でも、なんていふのかな、戦闘シーン以外の場面、普通の生活を描く場面を如何にも作りものですといつた風のセットで撮るやうになつた時期といふのが多分あるのだと思ふ。
模型で本物と見まがふやうな大火災といへば「怪奇大作戦」の「呪いの壺」だらうか。
去年「帝都物語」を見て、「「呪いの壺」の火災場面の方がずーつとよくできてゐる」と思つた。
残念ながら放映開始50周年を迎へる今年「怪奇大作戦」の再放送はなささうだ。少なくともやつがれの見られる局ではないらしい。
また「呪いの壺」を見て「寺が燃えてる!」と勘違ひする人がゐても困るのかもしれないな。
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