くつ下を履いて眠る
ここ数年、寒くなるとくつ下を履いたまま寝ることがある。
履くのは自分で編んだくつ下だ。
理由は、履き口がゆるいこと、それでも寝てゐる間に脱げないことの二点である。
履き口がゆるいのはきつく編まないからだ。
履き口から編む編み方の場合は大抵さうなる。
もともと手がきつくないといふのもあるけれど、母から教はつたとほり作り目の時に針を二本通すとそんなにきつくなることはない。
つま先から編む場合で履き口がガーター編みだつたりすると伏せどめに失敗したときにきつくなることがあつたが、これもきつくならない伏せどめの編み方を覚えて以来大丈夫だ。
米国のくつ下編みの人々のあひだで時折話題になることに、糖尿病を患ふ人用のくつ下の編み方といふのがある。
糖尿病患者の人はきついくつ下を履いてはいけないのだといふ。
さういへば十月に蜂窩織炎を患つたときに糖尿病を疑はれて、「きついくつ下は履かないやうに」と云はれたつけか。
そんなに手編みのくつ下といふのはきつくなるものなのだらうか。
ちよつと疑問である。
すくなくとも機械で編んだものよりはゆるくなるものだと思ふのだが如何に。
そんなにゆるいのになぜ脱げないのかといふと、踵をきつちり編むからだ。
どこのブランドだかは失念したが、以前安売りになつてゐたいい会社の靴を買つた。
この靴が歩いてゐても足にぴつたりとくる。
甲高なので、できるだけ甲を覆ふものかストラップのついた靴を好んで履いてゐたのだが、この靴は甲の部分が大きく空いてゐた。
それでも脱げないのは、踵がきゆつとしまつてゐたからだ。
慌ててサイズの合ふおなじ会社の靴を安売りのうちの買ひ足したことはいふまでもない。
そのときの経験があるので、くつ下を編むときでも踵はできるかぎりきつちり編むやうにしてゐる。
そんなわけで寝てゐる間にくつ下が脱げることはないのだつた。
寝てゐるうちに暑くなつたらくつ下は自然と脱げたはうがいいといふ考へ方もある。
でもさうするとあとでくつ下を探すのが面倒だ。
やはり脱げないはうがいいだらう。
こどものころは、くつ下を履いたまま寝るなんて考へもしなかつた。
真冬でも足だけは布団の外に出して寝るくらゐだつた。
足を布団の外に出して、布団の端を足でひつかけるやうにして寝てゐた。
寝相が悪かつたのでそのままの状態で目覚めることはまづなかつたが、寝入るまではさうしてゐないとダメだつたのだ。
それがいつしか足を布団の中に入れて寝るやうになつた。
中学生のころだつたか高校生になつてからだつたやうに思ふ。
そしていまでは真冬ともなるとくつ下を履いて寝てゐる。
人はこんな風にも変はるのだなあ。
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