5x3カードとの出会ひ
情報カードとの出会ひは高校の国語の授業だつた。
教師が指定したのは5x3のカードだつた。
当時は京大式カードが主流だつたのぢやあるまいか。
後にさう思つた。
なにしろ情報カードといふものがはじめてだし、教師からこれにしろといはれたので5x3カードを手にした。
Meadのものだつたと記憶する。
学校で習つたのは、参考文献と引用の書き方だつた。
著者名、書名など記述する順番から句読点の打ち方など厳しく教へられた。
実際に作文をすることはなかつたが、書くつもりで主題を選び、その主題に関する文献の名前を集めるといふところまでやつた。
生徒は図書室につれていかれて、雑誌目録で主題を探し文献を書き出すやう云はれた。
主題はリシュリューにした。
さきにも書いたとほり、採点は厳しかつたし、なんの役に立つのかさつぱりわからなかつたが、とつても楽しかつた。
雑誌目録なんてものがあるのもはじめて知つた。
調べたいことがどの雑誌の何年何号の何ページに出てゐるとか一発でわかつてしまふのだ。
いまだとネット検索でわかるのかもしれないけれど、分厚い本をめくつて知りたい情報に出会ふといふのが異様に気に入つた。
この授業の後しばらくは、読んだ本の情報やその中の気に入つた文章などを5x3カードに書き出してゐた。
そのうち、情報カードにも蔵書管理用のフォーマットがあることを知つて、一時は使つてゐたこともある。
でもまた単に罫線の引いてあるカードに戻つた。
二十歳を少しすぎるくらゐまではさうしてゐたと思ふ。
いまでも探せばそのとき使つてゐたカードが出てくるはずだ。捨てた記憶はない。
ただ、腐海の底に沈んでゐて取り出せない。捨てたも同然か。
このころアルバイト先で Macintosh に出会ひ、FileMaker といふものを知つて、「これだ!」と思ふのだが、いまに至るまで FileMaker を持つてゐたことはない。
Macを買つたらハイパーカードがついてゐたからそれで十分かな、と思つた、といふのはまた別の話。
5x3カードでは小さすぎると思ふときもあつて、京大式カードも使つてゐたことがある。
京大式カードは大きすぎた。
情報カードのよいところは、書いたものをシャッフルして並べ替へたりひろげたりして見ることができるところだと思ふ。
5x3カードだとつねに携帯してメモとして使ふのも容易だし、手の小さいやつがれでも取り扱ひやすい。
京大式カードはたくさん書けるけど、携帯性はさほどよくないし、取り扱ふのも大変だ。
一枚のカードには一内容だけ書くといふのが鉄則だしね。
いまでも5x3カードはポケットサイズの Moleskine に常時四、五枚はさんでゐる。
5x3カードが手放せないのは、主に持つたときの心地よさによる。
何枚か重ねてトランプのやうにパラパラとやるのがとても楽しい。
意味はない。
意味はないのだが、そこがいいんぢやない、といふ気もする。
ここのところ手帳の補助としてしか使つてゐなかつたが、またちよつと5x3カードを使つてみやうかな、と思つてゐる。
« 美しい水車小屋 | Main | ヴァーチャル・モバイル・ニッティング »
Comments