飯田市川本喜八郎人形美術館 三国志から幻の大作へ
九月末、飯田市川本喜八郎人形美術館に行つてきた。
九月三十日に飯田人形劇場で映画「蓮如とその母」を上映するといふので見に行つた。
その一環で、美術館にも立ち寄つた。
飯田市川本喜八郎人形美術館では開館十周年を記念してさまざまな催しが行はれてゐる。
現在常設点として展示室に「人形劇三国志」の人形が展示されてゐる。
展示室の奥には「三国志から幻の大作へ 人形が語る歴史物語」と題して、「項羽と劉邦」の人形七体と「平家物語」の人形二体が展示されている。
また、映画の上映にあわせて「蓮如とその母」に登場する人形十体の展示もある。
スタジオには「懐かしのテレビ人形展」と題して、「ひょっこりひょうたん島」「プルルくん」「新・三銃士」「プリンプリン物語」「シャーロック・ホームズ」の人形たちが並んでゐる。
盛りだくさんだ。
今回は「三国志から幻の大作へ」から「項羽と劉邦」の人形について書く。
「項羽と劉邦」は、今年の三月から四月にかけて、この美術館のスタジオに展示されてゐた。
そのときのことはここにも書いた(1 2 3)。
すこし前まで「源氏と木曽」の展示のあつたケースに「項羽と劉邦」から七体の人形が飾られてゐる。
人形は、三月四月の展示のときにゐた人形とおなじである。
むかつて左側から范増、項羽、虞美人、始皇帝、呂后、劉邦、韓信の順で並んでゐる。
項羽と劉邦とは後方のやや高いところにゐる。
ポージングも春に見たときとほぼおなじだ。
ただ、春とは視点の高さが変はるので、あのときとはまた違つた趣がある。
たとへば、劉邦は春に見たときはとても思慮深げで慎重さうなやうすに見えた。今回は、こちらを見下ろしてゐるからか、はたまた躰が若干右に傾いてゐるからか、どことなく食へない親父といふ風に見える。劉邦らしい。
春よりも明るいところで見られるので、細部がよく見える。
そんなわけで気になつたのが范増の衣装だ。
普段から着てゐるものなのだらうな。
そんな印象を受けた。
どことなくやはらかい感じがするからだと思ふ。
何度も身につけて着慣れたものといつた様子だ。
隣にゐる虞美人の衣装もやはらかい線を描いてゐるけれど、こちらはもとの布地がやはらかいからさうなつてゐる風に見える。
項羽や劉邦、韓信は鎧姿なので范増ほど衣装の布地の見えるわけではないが、鎧からのぞく裾などはいづれもぱりっとしてゐる。
時代劇のとくに映画を見ると感心することに、登場人物の衣装に着古した感じが出ていることがある。
撮影用に作つた衣装は、最初はできたての新品だらう。
それをどうにかして着慣れた感じを出して、それから撮影をするのだらう。
范増の衣装にもなにかおなじやうな工夫がなされてゐるのではあるまいか。
七体の人形のゐるケースの脇には、カシラだけのケースがある。
これも前回とほぼ同じで、虞美人と韓信、殷通がゐないくらゐかな。
荊軻のカシラは春と同様眉毛や髭などに鉛筆であたりを入れた状態で展示されてゐる。
前回より後ろを見づらいので、三つ編みなどに編んだ髪の毛がちよつとしか見えない。
展示は三段で、上の段の左から黥布・李斯・趙高・章邯・懐王・陳平。
真ん中の段が、蒙恬・項梁・荊軻・項伯・扶蘇。
下の段は、陳勝・蒯通・蕭何・張良・酈食其・夏侯嬰。
「項羽と劉邦」の人形は次はいつ見られるのか不明だ。
さう思ふともう一度くらゐは見に行きたいものだが、さて。
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