飯田市川本喜八郎人形美術館 蓮如とその母 2017
九月末、飯田市川本喜八郎人形美術館に行つてきた。
今回は人形アニメーション「蓮如とその母」の展示について書く。
今年は飯田市川本喜八郎人形美術館開館十周年にあたり、その一環として九月三十日に飯田人形劇場で映画「蓮如とその母」が上映された。
あはせて映画に出演してゐる人形も展示され、現在でも見ることができる。
展示内容は、ギャラリー奥から蓮如の母・おれんの若き日の姿とその弟・長右衛門とのケース、蓮如の妻・蓮祐と蓮如とのケース、法住のケース、東条坊、叡山の高僧、おれん、おけふ、おてつのケースである。
人形のポージングなどは以前の展示のときとそれほど変はりはない。
美術館には映画上映の前日に行つた。
気分が昂揚した。
明日は、ここにゐる人形たちの動くところが見られるのだと思ふと、期待が高まつてしまつて思はずケースのまはりを行つたり来たりしてしまつた。
「蓮如とその母」は、劇場公開されなかつたと聞いてゐる。
将軍暗殺や応仁の乱、大凶作による飢餓等で乱れた室町時代にあつて叡山からの弾圧を受ける本願寺を描く一方で、蓮如の母おれんの出自から同和問題をも取り扱つた深刻かつ重厚な内容の映画でありながら、エンターテインメントな部分もあつて、決して重苦しいだけの作品ではない。
見てゐて「次はどうなる、その先は?」と身を乗り出したくなるやうな映画だ。
上映機会が少ないことが惜しまれてならない。
映画の話はまたの機会にゆづるとして、展示でひとつだけ気になることがあつた。
それは、おけふの衣装が映画のときとは違ふことだ。
「蓮如とその母」には岸田今日子のそつくり人形であるおけふと黒柳徹子のそつくり人形であるおてつとが登場する。
声もそれぞれのモデルがあててゐる。
展示で見ると、ふたりなかよくつれだつて蓮如の講話を聞きに行かうといふところなのだらう、見てゐて思はずにつこりしてしまふ。
おてつはトレードマークのたまねぎ頭が特徴だ。衣装は朱色がかつた橙色の地に黒く細かいダイヤ柄が散つてゐて、足下の鼻緒の赤いのが目を引く。
おけふの衣装は灰色がかつた桃色の生地と灰色の生地との胴抜のやうな衣装だ。
どちらの衣装もそれぞれの個性をよくあらはしてゐる。
今回映画を見てゐて、この胴抜のやうな衣装が出てきたときに「あれ、おけふさんはおてつさんと一緒に出てくるんぢやなかつたつけか」と思つた。
見てゐると、どうもおけふさんではないやうだ。
映画のおけふさんは映画がさらに進んで、蓮如の講話に一緒に行かうとおてつさんが誘ひに来る場面で登場する。
見ると、衣装はちよつと落ち着いた色合ひの桃色で、濃い茶か黒の草むらのやうな細かい模様が点々とあるものだつた。
かういふこともあるものなのだなあ。
いつもなら、展示されてゐる人形を見たあとその人形が登場する人形アニメーションを見て、その後にまた展示室に戻つてきてさつきまで動いてゐた人形を見る。
今回は、美術館と劇場とのあひだの行き来を厭うてしまつて、映画鑑賞後に人形を見ることがかなはなかつた。
やつぱり今回展示されてゐるうちにもう一度行きたいかなあ……。
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