景気と芝居見物
消費税率は予定通り再来年にはあげるのだと内閣総理大臣は云ふ。
それに呼応してか、ここのところ景気がいい状態がつづいてゐていざなぎ景気を超えてゐるんぢやないかといふニュースを目にした。
景気? いいの? ほんたうに?
まつたく実感がない。
ニュースのいふ四年と数ヶ月とで学んだことは、
- 株価があがつても景気はよくならない
- GDPがあがつても景気はよくならない
いざなぎ景気超えのニュースでは、つづいて「しかし平均所得は減少してゐる」と報じてゐた。
そりやあ景気がいいといふ実感がないはずだ。
ニュースではグラフが提示されて、低所得者層が増えてゐるといふことも報じてゐた。
物価があがらないのも道理である。
あがつたら生活していけない人がたくさん出るもの。
それに、円安といふことは不景気だといふことでせう。いまはさういふ考へ方はしないのだらうか。
その一方で、GDPに対する赤字国債の割合が減つた、といふ話も聞いた。
ちやんと原典にあたつてゐないのではつきりとしたことはいへないが、これはいいことなのだらう。
などとくだくだしく経済の話がしたいわけではなくて、消費税率が十パーセントになつたらどうしたらいいのか、といふのが目下の悩みであり、それについて書かうと思つてゐた。
そもそも経済についてなんて語れやしないし。
消費税率が十パーセントになつたら。
まつさきに削減対象になるのが遊興費だらう。
とくに芝居。
なんとなく、2020年には歌舞伎を見なくなつてゐるのではないかとここ二、三年ほどぼんやりと思つてゐる。
最近見に行つても「かういふのが見たいんぢやないんだよねー」といふ芝居が多くてな。
と思つていま記録を見てみたら、案外さうでもなかつたので自分の印象なんてあてにならないものだなあと実感したところだ。
でも、今月歌舞伎座で「逆櫨」を見て、「次にこんな「逆櫨」が見られるのはいつのことだらう」としみじみ考へてしまつたんだよね。
自分が生きて歌舞伎座に行ける間には、ないかもしれない。
八月に歌舞伎座ギャラリーで「秀山祭播磨夜咄」といふ中村吉右衛門の話を聞く機会があつた。
吉右衛門は、自分のやり方を後進に伝へていくことに疑問を抱いてゐる、といふやうなことを口にした。
松竹も収入が必要だから、お客の来る芝居をしなければならない。
ゆゑに今後は新作が増えていくのではないか、といふやうな内容だつたと記憶する。
ことはつておくと、だからといつて後進になにも教へないといふ話ではない。
播磨屋が熱心に教へてゐる姿は見聞きしてゐる。
どちらかといふと、若い世代が古い世代に教はつたとほりに芝居をしたとして、それでは興行として成り立たないのではないか、といふ話だと理解してゐる。
実際、九月の歌舞伎座は席が取りやすかつたと聞いてゐる。
自分の座つてゐる範囲では目にしなかつたが、空席もあつたのださうだ。
七月八月とはえらい違ひである。
客がそれを望んでゐるのだ。
だから提供する側もそれに応じて手も品もかへていかねばならない。
でもなー。
それが主流になつたらもう歌舞伎座には行かないな。
などといひながら七月も八月も行つたので、たぶんまつたく行かなくなることはないとは思ふ。
でもそこに消費税率十パーセントが来たらさ。
行かなくなるね。
行かないでせう。
芝居に行かなくなつたら、その分地元の図書館で過ごすかな。
片道一里とちよつとあるので、歩いていけばいい運動にもなる。
朝並んで席を確保して、ぼんやりと本などを眺め、ときに図書館のそばにある喫茶店でコーヒーなどを喫する。
いいぢやあないか。
一番いいのは消費税率があがらないことなんだけどね。
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