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Thursday, 01 June 2017

The Conduit

文房具店で、パイロットのペンに関する文章を目にした。
なぜ書くのか、といふやうな内容だつた。
正確な内容は覚えてゐない。
この文章の最後に「手と紙をつなぐもの。それがペンです」といふやうな一文があつた。
「人と紙をつなぐもの」だつたかもしれない。
筆記具がないと紙に字を書くことはできない。
指先やつま先などに墨やインキなどをつけて書くこともできやうが、あまり実用的ではない。
紙に書くなら筆記具がほしい。

筆記具が手と紙とをつなぐものだとする。
鉛筆やクレヨンなどは別として、万年筆やボールペンは一種管のやうなものだと考へられる。筆も似たやうなものだらう。
ペンとは導管のやうなものだらうか。
指先からペンになにかが流れ入り、それがペン先から紙の上に流れ出す。
さういふ仕組みなのかもしれない。

流れ入り流れ出すものはなにか。
最初に思ひついたのは「血」だ。
指先からペンへと書き手の血が流れ入り、ペン先から紙へと血が流れ出す。
命を削つて書く、などといふが、ペン先から流れ出るのが血であれば、命を削つてゐるといふのもうなづける。

だが、自分で書いてゐるときに、自分の血がペンに流れて紙の上に出るといふ感覚はまるでない。
血が外に出る、それも管のやうなものに出されるのは採血のときだ。
採血のときの痛みはない。
気の遠くなるやうな感覚や血がなかなか出てこなかつたらどうしやうといふ悩みに近いものはある。
でもなー、違ふな。
血ぢやないな。

ペンが自分の手と紙とをつないでゐる、といふ感覚はないではない。
でもペンを通してなにかが流れ出てゐるといふ感覚はまつたくない。
なにも出てゐない気がする。
気のやうなのもさへ通つてはゐない。
それとも意識したことがないだけで、実はなにかが通つてゐたりするのだらうか。

普段筆記に使つてゐるのが万年筆で、それも筆圧をかけなくても書けるやうなペンばかりなので、書いてゐるときに抵抗を感じることがほとんどない。
それでさういふことを意識しないんだらう、といふ気はする。

いづれにせよ、ペンが導管である、といふのはちよつとおもしろい考へ方に思へる。
もうちよつと考へてみやう。

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