色なしと人やみるらん
先日「好きなアイドルとかゐたことないの?」と訊かれた。
考へてみて、ゐないやうな気がした。
多分ゐない。
一番アイドルに近いのは萬屋錦之介だらうか。
思ふに、フィクションの世界の主人公に興味のない人間は、あんまりアイドルを好きになつたりしないのではあるまいか。
ここのところずつと時代劇ばかり見てゐるのでそこから考へると、好きになるのは昔から山形勲とか山村聰のやうなインテリをぢさま悪か、ヘンテコリンな人だ。
実を云ふと錦之介ももとはヘンテコリン枠だつた。
はじめて錦之介を知つたのがTVの「子連れ狼」だつたからである。
その後、人形劇の「紅孔雀」だか「笛吹童子」だかを放映してゐるときに、古い東映の「紅孔雀」とか「笛吹童子」を見る機会があつた。
いやー、驚いたね。
あの拝一刀が、小四郎? 菊丸?
ないわー。
絶対ないわー。
といふわけで、最初はいはゆる「ギャップ萌え」のやうな感じだつた。
#多分、世にいふ「ギャップ萌え」とは違ふのだらうけれども。
役者や俳優にしても、主人公をもつぱらに演じる人にはあまり興味を惹かれない。
それを考へると、萬屋錦之介といふのは自分にとつてかなり稀有な存在だ。
「武蔵坊弁慶」の藤原秀衡とか「花の乱」の山名宗全とかが好きだつたりはするのだが、基本的に主役の人だと思つてゐる。
柳生但馬守のやうなヘンテコリンなのがいいのかもしれない、とも思ふ。
実を云ふと一心太助はそれほど好きではないし。あれはやつがれにとつては山形勲の松平伊豆守を楽しむ映画だし。
今後もアイドルを好きになることはないんぢやないかな、とも思つてゐる。
最近アイドルと呼べるやうな存在がゐないからだ。
ゐてもグループ単位なので「アイドル」といふ印象が薄い。
グループならグループ内の役割として好きな人はゐるかなあ、といふ気もしないでもない。
インテリをぢさま悪のやうな役割の人とかヘンテコリンな人とかがゐたら好きになるんぢやないかな。
そんな人がゐたら、それはもうアイドルではないか。
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