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Friday, 28 April 2017

飯田市川本喜八郎人形美術館 2017 ギャラリー奥・平家・特異なキャラクター

三月から四月にかけて飯田市川本喜八郎人形美術館に行つてきた。
二月末に展示替へがあつて、その展示内容を見に行つた。

前回は「源氏と木曽」のケースについて書いた。
今回は「ギャラリー奥」「平家」「特異なキャラクター」のケースについて書く。

現在「源氏と木曽」を展示してゐるケースの前には、ちいさなケースが四つほど並べられてゐて、人形アニメーションの人形が展示されてゐることが多い。
今回の展示では四つのケースはなく、ソファが設置されてゐてのんびりと座つて鑑賞できるやうになつてゐる。

「ギャラリー奥」のケースと「平家」のケースとも人形アニメーションの展示に使用されてゐることが多い。

「ギャラリー奥」のケースには朱鼻の伴朴と金売り吉次とが並んで立つてゐる。
このふたりをこんなに近づけるなんて、やるな。
以前、今回孔明と龐統とがゐるケースにそれぞれ吉次と伴朴とが入つてゐて、座つて相手の方を見てゐる、といふ展示があつた。
これがよくてねえ。
鋭い吉次の視線と探るやうな伴朴の視線とが緊張感を生み、ケースの間を通るのがはばかられるやうな展示だつた。
そのふたりをおなじケースに入れてそばにゐさせる。
ふたりとも居心地悪さうに見える。
伴卜の衣装には羽裏が使はれてゐるのださうで、そこも見どころだ。

「平家」のケースには二位の尼、清盛、徳子がゐる。
「源氏と木曽」を見たあとだと清盛の子どもか甥・孫がふたりくらゐゐてもいいかなあ、といふ気がする。
「源氏と木曽」の方が武で「平家」は文といふイメージなのかもしれない。
二位の尼は人形劇に出てゐた方がいま渋谷ヒカリエの川本喜八郎人形ギャラリーにゐる。
比べて見るのもおもしろいからう。
飯田の二位の尼はときに神々しく見えることがある。観音さまとかマリアさまのやうなのだ。
今回はさうした神々しさは控へめで、すぐ隣に清盛がゐるからかなとも思ふ。

清盛は僧形なので浄海入道と呼ぶべきなのかもしれない。
蜀錦の衣装がみごとだ。
三国志も平家物語も人形の衣装の多くは古着の帯地から作られてゐるといふからちよつと特別だ。
さういへば、劉邦の衣装も変はつた生地だつたけれど、あれも唐渡りの布だつたりするのかな。間違ひかもしれない。

徳子は人形劇のときとは面差しが変はつてゐる。
人形劇のときの徳子は「川本美人」と呼びたいやうな顔立ちだつた。
「川本美人」にこれといつた定義はないけれども、見るからに川本喜八郎の人形らしい美人さんなのだ。
飯田にゐる徳子は、もうちよつと幼いやうな印象があつて、親にいはれるままに嫁いで子を為して、その後つらい暮らしを送るやうになる人、といふ感じがする。

「特異なキャラクター」のケースは展示室の出口のそばにある。
ここも人形アニメーションの展示に使用されてゐることが多い。
今回は「人形劇 三国志」から華陀、紫虚上人、左慈、于吉仙人が右から順番に並んでゐる。
華陀が「特異なキャラクター」といふのはどうかと思ふのだが、神がかつた医術の持ち主、といふことなのだらう。
どうかと思ふ所以は、ほかの三人とは違つてまとつてゐる雰囲気がやはらかいからだ。
仁術の人だからだらう。
でもどこか厳しさうな感じはするんだけどね。

紫虚上人は最近は立つた展示が多い。
紫虚上人といへば囲炉裏の前に座つてゐるイメージが強い。
人形劇でさうだつたからだらう。
衣装のやれた感じが実にリアルでおもしろい。
紫虚上人といへば皮膚が鬼縮緬なのも見どころだ。ほかの人形はヤギの皮が使はれてゐるといふ。

左慈はこの中でも別格だ。
人形劇でかなり活躍してゐたからだらう。
このままサイキック・ウォーズになつてしまふのだらうかと思つた見てゐたものだつた。
今回もダーク・フォースのジェダイ・マスターのやうな趣で佇んでゐる。
左慈には目に仕掛けがある。
美術館の方が見せてくれることもあるのでお見逃しなく。

紫虚上人・左慈・于吉仙人とならぶと、「三国志つてさういふ話だつたつけ」と思ふくらゐ、怪異な感じがしてくる。
展示室の奥の方で照明もちよつと暗いのでなほさらだ。
于吉仙人は、正面から見ると瞳孔が開いてゐるやうな感じがしてちよつと怖い。
人形劇で見たときは、もうすこし常識的な人のやうに思へたけものだつた。
孫策の方が云ひがかりをつけてゐる感じだつたからだらう。

といふわけで、今回の人形に関する展示内容について書いた。
今年は特別展示がいくつも予定されてゐるので、それがいまから楽しみだ。
「ねほりんぱほりん」を見に行かれないのが残念でならない。

「項羽と劉邦」展その一はこちら
「項羽と劉邦」展その二はこちら
「項羽と劉邦」展その三はこちら
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玄徳の周辺 その一はこちら
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曹操の王国 その一はこちら
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